検索窓
今日:31 hit、昨日:7 hit、合計:68,201 hit

516話 黒木くんのネタバレあり ページ20

その夜、貴和に誘われて、私は貴和のベッドで今日の動画を見ていた。

お風呂から上がった貴和もベッドに座る。

「本当に気に入ったんだね、その動画」

『もちろんよ。とっても楽しかったわ』

貴和の目に真剣な光があるのに気付き、スマホの電源を落とした。

ベッドの上で向かい合って座ると、貴和は静かに口を開いた。

「児童公園の帰りにさ、勇気を出してもいいかなって言っただろ」

私も静かにうなずく。

「その勇気は、アーヤに言ったのと全く同じ意味の勇気なんだ。自分の一番大切なものが壊れても、耐えるための勇気。それを今、出すよ」

貴和は小さく深呼吸をして、少し目を伏せて話し始めた。

「オレは、普通と違う生まれ方をしたんだ。アメリカの病院で、第三者の精.子と卵子、代理母から生まれた。今の父親は戸籍上の関係だけで、血縁関係はない。実際の父親と母親、そして代理母については、国籍も名前も顔も、一生知らされないことになっている」

貴和は顔を上げ、私を真っすぐに見た。

「オレには、根がないんだよ」

貴和の話がそこで終わりなのを確認するように、私はしばらくしてから口を開いた。

『ありがとう、話してくれて。確かに、少し勇気がいる話よね』

優しく言ってから、少し貴和をにらむ。

『けれど、あなたが言った勇気は、なぜ必要だと思ったの』

貴和は目を丸くしている。

『私がその話で離れていくと思ったの?そんなこと、あるわけないじゃない。どんな生まれでも、貴和は貴和。私の友だちで、仲間で、家族で、恋人よ』

私は体を浮かし、貴和を抱きしめた。

『…何か聞こえる?』

「…心臓の音」

『それはいくつ?』

「…2つ」

『私はそれだけで充分なの。貴和の心臓が動いて、脳で考えて、体で動いて、いろいろな表情をして。あなたが生きててくれればそれでいい』

体を少し離して、貴和の顔を両の手のひらで包みこむ。

517話 黒木くんのネタバレあり→←515話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
73人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。