416話 ページ20
黒木くんが手をつっこみ、中から数冊の貯金通帳をつかみだした。
長い指の間にはさみ、すばやくページをめくって見ていく。
「そういうことか」
つぶやいて、通帳に視線を落としたままで、私たちに説明した。
「この通帳の、最初の欄は、入金だ。それも3億円。入金日は、23年前の2月、振り込んだのは保険会社だ。つまり、前年に死んだ家族3人の生命保険金が入ったってことじゃないかな。その後の入金は、18年前から大倉商会の給与が月に25万だ」
この豪華な暮らしを支えていたのは、その生命保険金だったのだ。
「出金は、毎月だいたい一定してるけど、今年は多いな。待てよ、この年も多い。今から12年前だ。今年と同じくらい使っている。不動産会社にも払ってるし」
12年前にも家を買ったということか。
「ああ、それはモッチーの癖みたいなものらしいよ。干支の辰年ってあるだろ。その辰年になると、家を買いたくなるんだって」
干支は12年周期だから、望月の年齢は…。
「だから今年も新年早々に、ここを買ったらしい。12年前にも、それで買ったんだって」
12年前のクリスマス・イヴはたしか…。
上杉がすっと青ざめた。
「12年前の家って、場所、わかるか」
砂原くんは、軽く頭をかしげる。
「埼玉県だって言ってたと思ったな。それ以上は聞いてない」
上杉は、硬い表情のままで砂原くんを見つめかえした。
「パソコン、借りたいんだけど」
砂原くんは、親指を床の下に向けた。
「俺の部屋にある」
砂原くんが全部言い終わらないうちに、上杉は荒々しくかけだしていった。
下まで降りてから、大きな声を上げる。
「黒木、手伝え」
「すぐ行く」
そう答え、出ていこうとする黒木くんについていく。
砂原くんの部屋に入ると、上杉がパソコンを開こうとしていた。
「なんだ、桜田も来たのか」
『ええ、役立てると思ってね。12年前のクリスマス・イヴ、埼玉県でたしかに殺.人事件があったわ』
私の言葉に、上杉と黒木くんは息をのんだ。
『頭を鈍器でなぐられた遺.体が、河原で発見されたのよ。
被害者は、13歳の少年。
その遺.体は司法解剖されたけど、体内からは三酸化二ヒ.素が発見されているわ。
犯人は、まだ見つかっていなくて、望月との関係は不明。
この少年には両親がいたしね。
警察では、通り魔的な犯行と見てるらしいわ。
けれど、今までの話からして、望月が関係してることを考えた方がいいのは確かね』
私が言葉を切ると、上杉が聞いた。
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ライ(プロフ) - 「まず桜田の家で、東大の卒業生名簿を見た。浪人している可能性も考えて、前後の年代も見てみたけれど、望月孝太郎の名前はどこにもなかった。あの人は、東大を出てないね」 みんなは、うなずいた。 それは、保険証からも確認できている。の部分が重複してますよ! (2021年3月26日 14時) (レス) id: 65b1e4f8ab (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます!まだまだ拙いこの作品を気に入っていただけて嬉しいです。その応援を糧にこれからも頑張っていきます! (2020年3月30日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mana - 私この作品大好きです!ものすごく面白いです!更新楽しみに待ってますので頑張ってください!応援してます (2020年3月30日 18時) (レス) id: ecb2e4c19d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 透架さん» コメントありがとうございます!神作とまで言っていただけて本当に嬉しいです。これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします! (2020年3月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
透架(プロフ) - 最近kzの小説が減ってきてて漁りまくってたら神作に出会いました!!すごく面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月21日 12時) (レス) id: 2be61dc08d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年3月20日 13時