411話 ページ15
「ん、最初はともかく、もう誰がやってもいいんだしね。僕やろうか」
すると黒木くんが、ダメダメといったように手をふりながら片目をつむった。
「適材適所って言葉があるだろ。砂原には、アーヤ、そして桜田なんだ。やってもらえばいいさ」
立花さんの方では、砂原くんが電話に出たところだった。
【お、桜田?それとも別のメンバー?】
立花さんは名前を言い、少し考えて言った。
「この間の話をしたいんだけど、若武の家まで来てもらってもいい?」
砂原くんは驚いているようだったけれど、やがて言った。
【いいよ。住所、送ってくれる?ググってくからさ】
わからなかったらしい立花さんがこちらを見るが、上杉たちがオーケーサインを出しているのを見て、電話を切った。
きっと、ここが正念場だ。
【ドーナツが揚がりましたけど、お持ちしてもいいですか】
島崎さんが室内電話をかけてきて、私たちはティーブレイクを取ることにした。
【今日は、生クリームやチョコレートをトッピングしたオールド・ファッション・ドーナツです】
それでみんなでお茶を飲んでいる間に、砂原くんが到着した。
「おじゃましまっす」
そう言って砂原くんは、玄関から上がってきて書斎のドアを開けた。
「お、ドーナツじゃん」
私たちを見まわし、自分を指さす。
「オレの分、ある?」
まるで昔からの友だちのように、メンバーの間に割りこんで座って、10分もすると、もうすっかり仲間の1人といった感じだ。
もしかしたら、こういう未来もあったのかもね。
「ところで、オレ、食いに来たんじゃなかったんだ」
ふと気づいたらしく、立花さんを見る。
「話って、何?」
その場が一瞬、緊張した。
立花さんが、静かに口をひらく。
「望月孝太郎さんが、[ララミー物語]にはまってるの、知ってる?」
砂原くんはうなずいた。
「部屋にたくさんテープがあるよ。高校時代に、バイトしてそろえたんだって。あれが理想の人生だって言ってる。だから部屋も、そのとおりに改造したらしい」
そう言いながら私たちの真剣な視線に気づいて、少し体を引いた。
「え、何?別にいいだろ。自分の好きな世界を作って、そこで楽しんだって」
それ自体は構わないが、望月はそれへの執着が尋常じゃない。
「でも望月さんは、東大卒でもなく、弁護士でもないんだよ。知ってた?」
砂原くんは、笑いだしそうになった。
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ライ(プロフ) - 「まず桜田の家で、東大の卒業生名簿を見た。浪人している可能性も考えて、前後の年代も見てみたけれど、望月孝太郎の名前はどこにもなかった。あの人は、東大を出てないね」 みんなは、うなずいた。 それは、保険証からも確認できている。の部分が重複してますよ! (2021年3月26日 14時) (レス) id: 65b1e4f8ab (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます!まだまだ拙いこの作品を気に入っていただけて嬉しいです。その応援を糧にこれからも頑張っていきます! (2020年3月30日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mana - 私この作品大好きです!ものすごく面白いです!更新楽しみに待ってますので頑張ってください!応援してます (2020年3月30日 18時) (レス) id: ecb2e4c19d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 透架さん» コメントありがとうございます!神作とまで言っていただけて本当に嬉しいです。これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします! (2020年3月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
透架(プロフ) - 最近kzの小説が減ってきてて漁りまくってたら神作に出会いました!!すごく面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月21日 12時) (レス) id: 2be61dc08d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年3月20日 13時