407話 ページ11
「金の出入りについて知りたいんだ。貯金通帳には金額だけじゃなくて、収人源や支出先の名前も印字されてるからさ。どこからいくら入ってきて、どこにいくら出ていったのか、一発でわかる」
若武くんが黒木くんを押しのけるようにして引き出しに飛びついた。
「貸せ。俺がやる」
ところが、どうしても開けることができなかった。
小塚くんがよってきてやっても、上杉がやってみても、私がやってみても、やっぱり開かない。
ちゃんとしたピッキング道具、持ってこればよかった。
「くっそ。この引き出し、メチャクチャ怪しいぜ」
「ぜったいここだよ」
黒木くんが部屋の中を見まわした。
「カギがあるはずだ。そいつを探そう」
私たちはいっせいに部屋の中に散り、カギのありそうなところを探しまわった。
ただ小塚くんだけは、写真に興味を示し、肩から提げていたバッグを床に置くと、中から何かを出して調合を始めていた。
私は、引き出しを開けて中に手を入れ、上に張りついてないか探してみたりしたが、そもそも望月が持っていたら、ここには無いよな。
ワードローブの前にいた上杉が声を上げた。
「小塚、ちょっと来て」
上杉君は、ワードローブの壁のフックにかかっていた紙袋の中から何かを取りだしていた。
「これ、なんだろ」
それは、縦横が5センチくらいのビニール袋だった。
中に、白い粉が入っている。
小塚くんは、それを光にかざしたり、ビニール袋の上から押さえて感触を試したりしていたけれど、やがて首を横にふった。
「わからないな。分析してみないと。少しもらっていってもいい?」
上杉がうなずく。
小塚くんはポケットからビニール手袋を出し、今まで着けていた布の手袋とはめ変えた。
慎重な手つきでビニール袋のファスナーを開け、自分のバッグから出した歯間ブラシのような細いシリコン棒をその中につっこんで、白い粉をわずかにからめ取る。
それ全体を試薬瓶の中に入れて、フタを閉めた。
「モロ隠してあるって感じだったから、どうせヤバいもんだよ」
上杉がそう言った瞬間、玄関の方で、バタンと音がした。
気づけなかった、今のは車のドアを閉める音だ。
「やべぇ、帰ってきやがった」
「5分前に引き上げる予定だったんだろ」
上杉がどなり、立花さんも叫んだ。
「若武、あんた、タイム管理してなかったの」
若武くんは、あわてて唇の前に人さし指を立てた。
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ライ(プロフ) - 「まず桜田の家で、東大の卒業生名簿を見た。浪人している可能性も考えて、前後の年代も見てみたけれど、望月孝太郎の名前はどこにもなかった。あの人は、東大を出てないね」 みんなは、うなずいた。 それは、保険証からも確認できている。の部分が重複してますよ! (2021年3月26日 14時) (レス) id: 65b1e4f8ab (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます!まだまだ拙いこの作品を気に入っていただけて嬉しいです。その応援を糧にこれからも頑張っていきます! (2020年3月30日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mana - 私この作品大好きです!ものすごく面白いです!更新楽しみに待ってますので頑張ってください!応援してます (2020年3月30日 18時) (レス) id: ecb2e4c19d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 透架さん» コメントありがとうございます!神作とまで言っていただけて本当に嬉しいです。これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします! (2020年3月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
透架(プロフ) - 最近kzの小説が減ってきてて漁りまくってたら神作に出会いました!!すごく面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月21日 12時) (レス) id: 2be61dc08d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年3月20日 13時