何故ここで！！？ ページ9
.
途中で降谷先輩と交代した兄ちゃんのピッチングは、今までで1番の投球だったと、私の目からでも分かった。
打撃力が全国クラスの市大三高の4番5番を連続三振。
その後の攻撃も兄ちゃんはツーベースヒットを放ち、スタンドをどよめきを隠せずにいた。
勿論私もだ。
兄ちゃんが試合で打ったのはあまり見たことがなかったし、同学年の選手達からも、『沢村はバントなら1級品』と言っていたからだ。
そして続く6、7、8回のピッチングも、疲れるどころか、どんどん精度を上げていき市大三高に得点を与えなかった。
それと比例に、何故か私のテンションは下がりを見せる一方だった。
「ごめん、ちょっと…トイレ」
ヨロヨロと立ち上がると、左のジャージの裾をあっちゃんが掴んだ。
「え、青道の最後の攻撃始まるよ……って顔色悪くない！？」
「なんか、お腹が………ヤバ……」
グギュルルルと不安を連想させるような嫌な音が聞こえ、思わず口を手で覆う。
「ちょ！！ここで吐かないでよ！
早く行ってきな！！」
力なく『ごめん』と杏ちゃんに謝り、メガホンを預けるとあっちゃんの肩を借りスタンドを後にした。
.
あーーーーーーーーーーーーー。
頭の中で叫んだ言葉だが、もしかしたら声に出ていたのかもしれない。
今現在、洋式トイレに座り込み両手で顔を覆っていた。
めっっっっっっちゃ、
「……痛い」
症状を声に出すと楽になるかもしれない、と弱い脳の考えを今ここに金属バットとバッティングセンスと元気な身体があれば場外ホームランをぶちかましていた。
１マイクロも気が楽にならないじゃないか。
死ねよぉぉぉぉぉ。
涙がこぼれそうなのを必死に我慢し、鼻をすすった。
トイレに入って何分経っただろう。
狭い個室、しかも時計がないこの場所はどうも昔から苦手だ。
試合終わっちゃったかな……。
どっちが勝ったんだろう。
最後の攻撃、青道は逆転出来たのだろうか。
そんな自問自答が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していると、ガチャッとドアが開いた音がし、数人の女性の話し声が聞こえてきた。
思わず息を潜めてしまった。
「初めて野球の試合見たけど、よく分らなかったー。てか途中から、あの人のお兄さん出てきたよね？
めっちゃうるさくてウケるんだけど」
「あぁ、沢村先輩でしょ？
でも凄かったよね！」
「ていうかさ、奥村君試合出てないじゃん！？」
待って、コイツら、あの佐々木さんとそのグループじゃね！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rata.(プロフ) - 更新ずっと待ってます！ (2023年2月26日 5時) (
レス) @page19 id: 5fd90af7d6 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (2021年5月12日 1時) (レス) id: be3bd64a5f (このIDを非表示/違反報告)
まっちー(プロフ) - もう更新されないのでしょうか？ずっと楽しみに待っています！ (2020年7月19日 18時) (レス) id: c61d77fcce (このIDを非表示/違反報告)
作者 - ダイヤファンさん» コメントありがとうございます。ネタバレになるような事は言えませんが、私も今の妹の人間関係はギスギスしている最中なのでいつか和解できてほしいと思っています。これからの展開を見守っていただければ幸いです。 (2019年12月18日 0時) (レス) id: a176047dcd (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤファン - 作者さん» まさか動画の拡散で天久に気づかれるとは…ビックリですね！今後、沢村の妹は奥村との仲直りできるだろうね…佐々木さんにも沢村の妹の事和解して欲しいなぁ…と思います！更新を楽しみに待っています！ (2019年12月16日 18時) (レス) id: f3c6ebb892 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年9月28日 12時
