その人、沢村先輩の妹ですよ。【奥村光舟】

先攻の戦い。 ページ4

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「遂に我らが青道も準決勝へ突入致しました！！！」

メガホンを通して、私の大声がスタンドに響く。

私はメガホンがあまり好きではなかった。
メガホンで声を出すと、声がくぐもって、大きな声を出していると実感出来ないからだ。

だが、光舟君と目が合った時、言葉が詰まりかけ息が止まりそうになった。
反射的にメガホンを使ってしまったが、今日はしょうがない。

軽く息を吐き、再度言葉を続ける。

「御幸さんがどんな手を使ったかは分かりませんが、先攻がとれたそうです！！
これは青道のリードオフマン、倉持洋一に命懸けてもらうしかないですね！！
決勝への道を拓いてつかぁさい倉持さーーんッ！！」

途端に、青道スタンドから倉持さんを応援する声が上がる。

その歓声を受けながら倉持さんはバッターボックスに立った。それを確認すると、私達スタンド陣はメガホンを口元に近付け、一斉に倉持さんのヒッティングマーチである『TRAIN-TRAIN』を歌い始めた。

ブルペンで肩を作っている最中である兄ちゃんも左手を上下に振りながら負けじと歌う。

後攻である市大三高のピッチャーが、キャッチャーのサインを確認し小さく頷く。

そして勢いよく腕が振り下ろされ、白球が飛び出されると試合の火蓋は切られた。



＿＿キーンッ！！

気持ち良い程に鳴り響いたその音と共に、ボールはセンターの頭上を超えた。

倉持さんはすかさず二塁を狙い、いきなりのツーベースヒット。
スタンド共々ベンチからも歓声が上がる。

「倉持さん野生のチーターッ！！
その足は反則ですよ！！」

大きく手を振ると、倉持さんは太ももに付いた土を払いながら拳を上に上げた。

次にバッターボックスに立った東条先輩がバントを決め、倉持さんは三塁に進む。

絶好の先制点のチャンスに続くクリーンアップ。

金属バットが主流の高校野球で、小柄な体格ながら木製バットを使用する小湊先輩が打席で構える。

一球目を見送りストライク。
二球目、三球目もバットを降らずボールとなった。

これでカウント2-1。

「振らないね、小湊先輩」

「狙い玉があるのかもよ！」

あっちゃんの言う通りなのか、四球目もバットを振らず際どいコースだったがボールと判定された。

結局続く五球目でフォアボールとなり、小湊先輩は一塁へ。

その小さな背中を見送っていると一際大きな歓声が上がった。

それもその筈だ。
次の打席は。





「御幸さーーんッ！！
狙い打ち！！」

「声援凄い……」

先制点の行方。→←それでもチラつく影。

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