それでもチラつく影。 ページ3
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春季東京都大会、準決勝。
"青道"対"市大三高"。
西東京の強豪校が相見える試合を見るべく、神宮球場には多くのギャラリーが足を運んでいた。
スタンドに移動する途中に、青道の制服を着た女子も何人か見掛けたが、佐々木さんの様な姿は大勢のお客さんのお陰でもあり視界には入らなかった。
帰る時も下手に遭遇しないようにしないと…また何言われるか分からないしね。
メガホンを持つ手に力が入るが、今の目的を見失っては行けないと邪気を祓う様に首を横に振る。
今は目の前で戦ってる選手を全力で応援する。
それが一番大事だ!
「よっしゃ気合い入れてくぞーッ!!」
「今日はいつもより声が出てるね!」
「話に聞けば、市大三高はうちのライバル校の1つらしいじゃないですかあっちゃん!興奮しない訳がない!
そこ!もっとバット振っとけ!!」
ベンチ付近で素振りをしていた選手達付近から、倉持さんの『ア"ァ"ッ!?』という声が聞こえたが、取り敢えず聞こえないフリをしよう。
「あれ?」
「ん、どしたの杏ちゃん」
杏ちゃんは、市大三高ベンチに目を凝らしていた。
するとすぐ首を捻らせ、気の所為?と言葉を漏らした。
「なんか、こっちジッと見られてる気がしてさ」
杏ちゃんの視線を辿るように、自分も市大三高ベンチに視線を向けると、隣のあっちゃんも、どこ〜?と3人頬っぺがくっ付く程に密着し目を細ませる。
だが、グラウンドからベンチまで距離はあるし中々判断が難しい。
「…珍しい鳥でも飛んでたんじゃない?」
「杏奈の気の所為だよ!ドンマイ!」
「なんで2人に笑われなきゃいけないの私!?」
少し口を尖らせていじける杏ちゃんを笑いながら、またチラリと市大三高ベンチを見ると、1人の選手が、こちらに手を振った様な気がした。
疑問を持ったが、そんなモヤモヤは試合開始のサイレンと大勢の観客の歓声でどこかに飛んで行った。
選手が集まり整列をすると、威勢のいい挨拶を交わす。
「ほら、いつもの決めよう沢村さん!」
「任せろ!」
何故か恒例になりつつある、選手が礼をした後に始まる、私の1人応援。
意外とこれが好評で、試合後に見に来たおじちゃんとかお兄さんに声を掛けられる事も少なくない程だ。
私がいつもの様にグラウンドに背を向け、顔を上げると、いつかの試合の様に光舟君と目が合う。
「ッ……」
見ないでよ、今だけは。私の事。
私、今君の前で笑えない。
私はメガホンを口元へ運んだ。
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rata.(プロフ) - 更新ずっと待ってます! (2023年2月26日 5時) (レス) @page19 id: 5fd90af7d6 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2021年5月12日 1時) (レス) id: be3bd64a5f (このIDを非表示/違反報告)
まっちー(プロフ) - もう更新されないのでしょうか?ずっと楽しみに待っています! (2020年7月19日 18時) (レス) id: c61d77fcce (このIDを非表示/違反報告)
作者 - ダイヤファンさん» コメントありがとうございます。ネタバレになるような事は言えませんが、私も今の妹の人間関係はギスギスしている最中なのでいつか和解できてほしいと思っています。これからの展開を見守っていただければ幸いです。 (2019年12月18日 0時) (レス) id: a176047dcd (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤファン - 作者さん» まさか動画の拡散で天久に気づかれるとは…ビックリですね!今後、沢村の妹は奥村との仲直りできるだろうね…佐々木さんにも沢村の妹の事和解して欲しいなぁ…と思います!更新を楽しみに待っています! (2019年12月16日 18時) (レス) id: f3c6ebb892 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年9月28日 12時