不意打ちか? ページ2
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「遅くねーか、A」
浅田に背中を押されながら柔軟をしている九鬼が、横目でベンチを見て呟いた様に言った。
九鬼の背中を弱々しく押す浅田も相槌を打つ。
放課後、帰り支度をしている俺の横で、日誌書くから先に行ってて!と日誌を広げた沢村は止まることなくシャーペンを走らせていたから、心配要らなそうだし、この調子なら部活に遅れる事無く合流出来そうだと思ったが…。
「浅田!もうちょっと強く頼む!」
「う、うん!
こ、こんな感じかな……」
明らかにさっきより強く押されている九鬼の顔が一瞬にして歪む。
「いっっ!たたたた!!!
押しすぎ押しすぎ!」
「何やってんだよ二人とも!」
茶番を繰り広げる隣で、俺とペアで柔軟をしている拓が笑いながら明るく言う。
だがそれを見た拓本人も、面白がって俺の背中を強く押そうと提案してきたが、俺は颯爽と首を横に振り断った。
遅いな、沢村。
なにかあったのか?
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沢村に会えたのは、練習開始から1時間程経った時だった。
会えた、というのは言葉を交わせた、という意味で練習中チラチラアイツの姿は見掛けていたし、練習に顔を出したとすぐ分かったのは、沢村先輩が大きな声で沢村の名前を呼んだからだ。
今日、沢村が昔病気を抱えていたせいで、兄の沢村先輩と遊ぶ機会が無かったと話を聞いたせいか、楽しげに話すあの兄妹を見ると、つい哀れんだ目で見てしまう。
そして先輩がこんなにも妹を溺愛しているのにも辻褄が合う気がした。
「お疲れ様みんな!」
休憩になり、ベンチにゾロゾロと部員達が戻るとドリンクとタオルを持って笑顔で迎える1年の三人のマネージャーがいた。
「サンキュ!大遅刻王A」
沢村からドリンクを受け取った九鬼が笑いながら小突いた。
「いやいや練習前にはギリ間に合ったんだよ!
グラウンドに行く途中に準備してる春乃先輩に会ったから、そこから参加したって感じで!!」
慌てながら九鬼に言い訳をしていると、それを無意識に見詰めていた俺と目が合った。
沢村は先程よりも一層明るい笑顔を見せたが、すぐ苦虫を噛み潰したような顔に変わり俺の元へ小走りで近付いてきた。
「お、お疲れ様。奥村…君」
「……うん」
差し出したタオルを持つ手が少し震えていたのを、俺は気付かずに徐にタオルを受け取った。
これ以降、今日俺と沢村は会話をしなかった。
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rata.(プロフ) - 更新ずっと待ってます! (2023年2月26日 5時) (レス) @page19 id: 5fd90af7d6 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2021年5月12日 1時) (レス) id: be3bd64a5f (このIDを非表示/違反報告)
まっちー(プロフ) - もう更新されないのでしょうか?ずっと楽しみに待っています! (2020年7月19日 18時) (レス) id: c61d77fcce (このIDを非表示/違反報告)
作者 - ダイヤファンさん» コメントありがとうございます。ネタバレになるような事は言えませんが、私も今の妹の人間関係はギスギスしている最中なのでいつか和解できてほしいと思っています。これからの展開を見守っていただければ幸いです。 (2019年12月18日 0時) (レス) id: a176047dcd (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤファン - 作者さん» まさか動画の拡散で天久に気づかれるとは…ビックリですね!今後、沢村の妹は奥村との仲直りできるだろうね…佐々木さんにも沢村の妹の事和解して欲しいなぁ…と思います!更新を楽しみに待っています! (2019年12月16日 18時) (レス) id: f3c6ebb892 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年9月28日 12時