コーヒー時々オムライス

13 ページ12

部長に則されるがまま
私たちは、手をつないだまま
そのバーを後にする

「部長・・・」

「ん？」


私は、呼び止める

「バーを出た途端、部長呼びかよ」


「そういう訳じゃなくて・・・
すいません、癖です」


私の頭の中は、一生懸命理性を保とうと頑張る自分と
「もうどうでもいいや」と思ってしまう自分が、

この心地いい身体の火照りに翻弄される


「部長・・・」

「あはは、だから、何？」

「足・・・痛いです」


慣れないパンプスなんか履いてくるんじゃなかった
痛くて歩けない・・・


そう言って、パンプスをポイっとぬいでしまう

どうしてそうしたのかわからないけれど
余りの痛さに、
後者のもうどうでもいいや・・っという考えが
どうやら一致したらしい


「おいおい。ここで脱ぐなって
シンデレラかよ」


「シンデレラは、わざと脱いだりしません、
あれは脱げちゃったんです
わざと脱いで逃げたのなら、完全に確信犯じゃないですか
って、あれ？
確信犯？
あ・・・私は違いますよ、わざとじゃないです
痛いんです・・・本当に」

「あはは
確かにそうだな。
でもここから裸足で帰るわけにはいかないだろ？」


そう言って
部長は私の前にしゃがみ


「ほら・・・酔っ払いシンデレラ
靴を履いてください」

と、靴を差し出した部長


私の上司が
私の前でしゃがんでほほ笑む

しかも、課長じゃなく、部長だ

何やってるんだ、私


「嫌です」

だって・・・
痛いんだんもん


いつも、我慢ばかりしてる私
自分でもどうしてこんなに駄々っ子みたいになっちゃったんだろ


「あぁ・・これじゃ痛いはずだわ」


そ言って、部長が私を見上げる

「真っ赤になってる上に、水膨れみたいになってる
どうして、こんなに我慢してまで履くかな」


「だって・・・少しでもかわいくいたい・・・です」

「だから、言ったろ？
Aはかわいいって・・・ほら」


そう言って転がった靴を差し出す


私はムぅと口をおそらく尖らせたまま

その靴を履く

「痛い・・・」


そう言うと

「もう少し我慢して？
表でタクシー拾ってあげるから」


と言って笑った


あぁ、もう今日は帰されちゃうんだ私

そう思うと、
残念な気持ちと、
少しばかりホッとしている自分がいる

そう・・・
この人とは恋をしちゃいけない

バカだな私

「ん？どした？痛い？」


「大丈夫です」


「あはは
今度は急に強くなったな、
でも、ほんと痛そうだから、ほら」

14→←12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す