愛を考えてみて、それから伝える【黒尾生誕祭】 (ページ8)

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君を好きな理由ページ8

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俺は何が好きでAと付き合っているのか。
考えれば考えるほどその理由はわからなくなっていった。

Aの手入れの行き通った茶色の短くて柔らかな髪の毛。俺はどちらかと言うと長い髪の毛が好きだし、Aみたいなパツン、と切りそろえられた前髪より流してある前髪が好きだ。

時折後ろを振り返り俺に話しかけてくるAの顔には入念に施された校則ギリギリのメイク。
メイクだって、濃いよりかは薄くて可愛く見えるような女子の方が魅力的だと思う。
他にも挙げたらキリがないけれど、スカートの丈だったり少し伸ばされた爪だったり、俺が苦手とするような場所がたくさん揃っているのがAだった。

そして、何より香水の匂い。
付き合ってそろそろ半年が経とうとしているのに
俺とAが付き合う前からAが愛用しているこの香水の匂いは、ハッキリ言ってとても苦手で未だに慣れる事ができないでいる。
甘くて重い匂いのするこの香水は本当に女を連想させるような、まさに女のためにあるようなそんな香水。

そこまで多くつけているわけではないのにここまで強く香るこの匂いがどうしても好きにはなれなかった。
楽しそうに、短い髪をふわふわと揺らしながらAが弾むような足取りで歩く度に香ってくるその香りにクラリと頭が眩む。

俺がそんなに風に思っている事も知らないAは楽しそうに足を進める。
俺が考え込んでいる間に、俺たちは気づいたら駅前の人の多い通りを歩いていて、人の波とは反対方向に進んでいた。

「電車乗らないのか？」

「乗らない！今日はこっち」

人の多さでガヤガヤとしているせいか、いつもより大きめの声で会話をする。するとまた返ってきたのは楽しそうな弾んだ声。
目的地はもうすぐなのか、Aの足取りがさっきに増して少し軽く、そして速くなった気がした。

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