さよならを言わない ページ29
「声大きすぎてマイクキーンなってるから。」
「うん、知ってる。」
背伸びをしてお兄ちゃんの涙をそっと拭う。
「なんで結婚式を今日にしたか、わかる？」
首を振るお兄ちゃんに精一杯の笑みを見せる。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。」
お兄ちゃんが優しく私の手を取る。なんだか、お兄ちゃんが新郎みたいだ。
「特別な日だから。
私の世界一のお兄ちゃんにありがとうって言いたかった。
……ずっと言いたかった。」
家族ってこんなにあったかいものだったんだね。あったかくて優しい。
ありがとうってこれで何回言えたかな。百回も言えてないとは思うけど、心のなかでは三万回言ってる。
毎日言ってる。
「お前がそんなこと言うから、俺が妹離れしづらくなるんだよ、わかってるか？」
「わかってるよ。」
寂しいよ。
だけどそのぶん、すごく嬉しいの。
「お兄ちゃんは私が幸せになったら嬉しい？」
「……当たり前の質問はしないでいいよ。
お兄ちゃんはお前の幸せが一番の幸せだ。」
そうやって言われた瞬間に枯れたはずの涙がぶわっとあふれだした。お兄ちゃんが笑ってることが私の左手の薬指を締めつけてるみたいだった。
これだからお兄ちゃんに素直になりたくなかったんだ。
ありがとうなんて言いたくなかったのかもしれない。
幸せだよなんて言いたくなかったのかもしれない。
お兄ちゃんに幸せになってほしくて、ずっと私は走ってきていたのかもしれない。
そんなことを思うと、余計に言いたいことは言えなかった。
「さよなら、っていう予定だったんだけどね。」
「奇遇だな、俺もだ。」
目が合って、笑う。
「……じゃあ、お兄ちゃん。
幸せに、
なってください。
言い終える前に強く抱き締められて、何故だかお兄ちゃんの香りが酷く懐かしかった。
END
＿＿＿＿＿＿＿＿
今回【さよならを言わない】を書かせていただきました雪比良です。合作はじめてでしたが楽しんでいただけていれば(笑)読んでいただき本当にありがとうございました!!!
普段はHQのファンタジー書かせてもらってます。
【HQ】ABSOLUTE 819
雪比良
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ｒｕ:ｃ - 私の憧れ兼大好きな作者様が揃ってて、発狂しかけました← 一日遅れたけど、黒尾さん誕生日おめでとう。 皆さんこれからもがんばってください!!!! (2016年11月18日 22時) (
レス) id: 202298c49d (このIDを非表示/違反報告)
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