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空想世界の中の僕と君。 ページ19

僕が消えるまで、後6日になった。

いや、まだ6日ある。
したいことをして過ごせばいい。
だから僕は今、グリム童話集を片っ端から読破している。
この前、花宮クンが持ってきた古いグリム童話集。
それがきっかけで、花宮クンの部屋に置いてあるグリム童話集を
自室(という名のザキくんの部屋)に持ち込み、ずっと読んでいる。

…時間がかかりすぎだと言われても困る。
僕はもとから人より読むスピードが少し遅かったんだからしょうがない。

「ねーえーAー」

「原クン、グリム童話読みにくいんで抱き付かないでください」

やだー、と口を尖らせる原クンの頭にポンポン、と手を置く。

「別にまだ6日あるんだから…。あぁ」

「え、何、何っ?」

原クンが、待て、をされてる犬みたいに見える。尻尾をパタパタさせている犬に。

「残りの5日は、君たち一人ひとりと過ごすよ。人数的にも丁度いいだろう?」

「おー、すっげー!A頭いーっ!!」

だから今日は、グリム童話集を読ませてくれと原クンに伝え、
それから、花宮クンたちにも伝えておいてくれと手短に頼んでおいた。

グリム童話集を読み終わったタイミングで、コンコンコン、とドアがノックされる。

「どーぞ」

えーっと、あれ、あれだよあれ。…そう、瀬戸クン。
IQ160の秀才で、蜘蛛の巣を張るときの重要人物。

「珍しいね、君が来るなんて」

そんな事ねぇよ、とあくびをしながら答える瀬戸君。

「ここ、元々は俺の寝床だったし」

「へぇ…。じゃあ寝にきたのかな?」

いや、と瀬戸君が口をはさむ。

「暇だったから来た、みたいな」

ほう。暇つぶしだけに利用されるのか僕は。
少しイラついたため、おでこのほくろを押しておいた。
あれ絶対何かのボタンだよね。
あれ押したら花宮クンの眉毛が1mm太くなる…とか?

「Aー…。寝ていい?あと寒い」

知 っ た こ っ ち ゃ ね ぇ や い !
お前が寝たかったら寝ればいいし、寒いなら毛布でも被ってろよ。

「だからなんで皆抱き付くんだよぉ…!」

なんで皆、僕で暖を取ろうとするんだ。本っ当に意味が分からない。
ガスッ、と本の角で瀬戸クンの頭を殴る。
瀬戸クンはただ「ふがぁっ」と言っただけで、起きる気配は全くない。


…もう今日は寝てしまおうか。
少し、グリム童話を読み過ぎて目が痛い。

目を閉じ、いろいろと空想の世界を広げていく。
僕が消えたら、君は泣くだろうか。笑うだろうか。


いや、君が幸せなら、それでいい。

残り5日、おかゆと右手。→←ノート、雑誌、古びた絵本のグリム童話。



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霧崎沙流@天ぷら系女子(プロフ) - [忘却王]れおさん» 面白かったですか…。とても嬉しい限りです。こちらこそ、この作品を最後まで読んでくださりありがとうございます。 (2014年3月29日 22時) (レス) id: 212878b2bc (このIDを非表示/違反報告)
[忘却王]れお(プロフ) - 完結おめでとう。すごく面白かったです。終わらせ方も好みでした。ありがとうございました。 (2014年3月29日 22時) (レス) id: 8ad14d2c12 (このIDを非表示/違反報告)
霧崎沙流@天ぷら系女子(プロフ) - ★黒猫★さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2014年3月20日 18時) (レス) id: 212878b2bc (このIDを非表示/違反報告)
★黒猫★(プロフ) - 続きが気になります.更新がんばってください! (2014年3月20日 16時) (レス) id: a547ed74fa (このIDを非表示/違反報告)
★黒猫★(プロフ) - 続きが気になります.更新がんばってください! (2014年3月20日 16時) (レス) id: a547ed74fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霧崎 沙流 | 作者ホームページ:http://yaplog.jp/kirisaki73/  
作成日時:2013年7月19日 21時

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