検索窓
今日:23 hit、昨日:3 hit、合計:35,291 hit

32 ページ38



マイキー、俺の秘密を教えてやる。

イザナは俺のすぐ目の前まで顔を近づけて、楽しそうにそんなことを言った。


『真一郎は俺の思う、"理想の兄"になってくれなかった。

そして、お前の部下が殺しちゃった…だから、決めたんだ。

俺はお前を"灰"にして、"真一郎(お兄ちゃん)にする"

……だから、早く空っぽになれよ』


正直なことを言えば、イザナが何を言っているのか俺にはわかんなかった。なにいってんの?お前。って感じ。

でも、俺がそれを言うより早く、イザナの蹴りが飛んでくる。

『お前が全て奪ったんだよ、万次郎!…だから、

だから、俺は、お前も殺す。』

息を着く暇もないペースでイザナの蹴りが飛んでくる。

『マイキーくん!!』
『ば、バケモンか…!?黒川イザナ……!』

『どーしたマイキー!?テメーの本気はこんなモンか!?』

イザナの拳には迷いがない。
これ以上やったら危ない、のリミッターがないから、全力で全てを叩きこんでくる。他人に興味が無いから、ある種遠慮がない。

人を殺せる拳だ。

今にも飛んでいきそうな意識を慌てて掴んで、次の衝撃に備える。

『おいおい!マイキー!!マジかよ?これがお前の実力か!?
ほんとに殺しちまうぞ!?』

『他人にキョーミがねー、かぁ』

なんか、かわいそーな、やつ。

『お前の為に戦った仲間も、か?』

『俺のために戦った!?…はは、ちげぇよ。俺が怖ぇーから、戦ったんだ。

ガキのままごとと一緒にすんな!』

イザナの脚が脇腹に飛んでくる。さっきと比べて、少し遅い。

『天竺にあるのは恐怖と利害のみ!』

頭を狙った拳を受け流す。

『信頼や友情なんて、実のない幻想だ』

ぶん、と、俺の顎先を掠めたイザナの爪先。

確実に、イザナの動きは鈍くなってきていた。

『お前は、どこまで自分を孤独(ひとり)だと決めつける?』

イザナがぴく、と肩を揺らして僅かに動揺したのが分かる。

『……真一郎もエマも死んだ。唯一のマナカも行方不明。

お前も、孤独だろうが!!』

今度こそ、イザナの蹴りを受け止めた。

『……違うよイザナ。お前にはまだ、(オレ)がいて、俺には(オマエ)がいる』

さっきまでぎゅっと小さくなっていたイザナの瞳孔がす、と落ち着いていく。

…いつか、シンイチローが俺に言った、『もうひとり、兄貴が居たらどうする?』ってはなし。あれ、イザナのことだったんだね。



『……イザナ、俺はお前を救いたいんだ』



33→←31



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。