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いつも見ていた赤色の特服、横浜天竺。
むかしよく見た黒色の特服、東京卍會。

今日の注目対戦カードであろう、2人がリングの真ん中で顔を合わせている姿。

万ちゃんと、イザナくん。


このなかに私の白色のコートはさぞ浮いていることだろう。とはいえ、周りはそれどころでは無いのだ。私に気付いているひとはあの場に居たのだろうか。


聞こえるはずもないゴングが、私の頭の中で鳴り響いた。

瞬きの間に、万ちゃんの回し蹴りがイザナくんに当たった。先制攻撃である。

少し離れたところにいる私にも聞こえるくらいの、鈍い音。骨に響いたであろう、おと。

『うぁお♡すげー蹴りだね!マイキー!!』

そんなことを言うイザナくんに、追い打ちをかけるようにまた蹴りが繰り出される。

『天性のバネとバランス感覚!無敵と謳われるだけはあるな』

そんな蹴りを止めるイザナくんは余裕そうな顔で、とーんとんと軽く地面を飛ぶと、ぎらぎらとさせた目で『いーね!久しぶりに気圧(テンション)上がる♡』と嬉しそうに咆哮した。
そして突進する万ちゃんの顔を蹴り倒し、さらりと笑う。

『でも、もう見切っちまった』

ざわざわ、と周りがざわつくのが分かった。

私だって驚いた。イザナくんの威力もそうだけど、小さい頃から負け無しを豪語していた万ちゃんが軽々吹き飛んだことに。

『圧倒的戦才(センス)…それこそが、黒川イザナの魅力!』

今まで見たことも無いイザナくんの目。
私の背筋を冷たい何かが駆け抜けて行った。私を黙らせたときだって、あんな目はしてなかったと思う。

『…俺は、"暴力"で全てを捩じ伏せてきた。計画が狂っちまった以上は、しょうがねえ』

彼は万ちゃんとの距離をぐんと詰め、何か呟いた。
私がいるところまでその声は届かなくて分からなかった。
ただひたすらに彼の狂気を孕んだ目から目を逸らせなかった。

ただ、不思議とさっきみたく脚が震えて立ってられないなんてことは無かった。

つられて、私もアドレナリンが出ていたのだろうか。わからないけれど。

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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

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