マリアに、懺悔。【1】 (ページ34)

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『……に、』
『！』
『なに、せなかむけてんだよ！！』

雄叫びを上げながら、無様にも身体ごと突っ込んでくる。

タイマンなんてもんじゃない。サンドバッグだ。向こうから勝手に動いて、こっちに向かってくるタイプのサンドバッグ。

『……もう立つな、タケミチ…』

『しつけーヤローだ』

『てめえらが、まいきーくんを、くるわせたんだ…！

おれが、
マイキーくんを、まもるんだあ゛っ！！！！』

これには思わず、気圧された。
その鬼のような気迫にか、そのしつこさにもはや恐怖したのか。

…まぁ仕方ねえこれくらい食らってやるか。倍以上で返してやるよ。

花垣の握った右の拳が真っ直ぐに、

『…』

『……おせぇ、よ』

『…？』

真っ直ぐに突き伸ばしかけた拳が、天を向く。

『おれ、まけなかった、すよ』

『は？何言ってんだお前』

『おれ、まけなかったっすよ、そーちょー、』

総長。花垣は確かにそう言った。

『は、？』

まさか、来れるわけねえ。これるわけ、ねえ。
だって、あいつは、

『……ありがとう、タケミっち』

僅かに泣き腫らしたあとが見えるマイキーが、堂々と、俺と稀咲の間を抜けた。

『少し、タケミっちと話をさせてくれ』

そのおおきな後ろ姿に俺は、今度こそ恐怖を感じた。

『…きてくれたんですね』
『ありがとう、タケミっち』
『……でも、なんで。とても、これるせいしんじょーたいじゃ、なかったハズ、』

そして、そんな俺に追い討ちをかけるかのように、埠頭に響き渡るバイクのエンジン音。

振り返らずとも、誰が来たのか、何となく分かった。

『どらけん、くん！？』

なんで、なんで、来れるんだ。
とてもケンカなんかできるような状態じゃねえだろ。
なんで、なんで。

…また空気が変わっていく。

あぁ、たかが中坊のマイキーに、

『ハンデいる？』

クソガキひとりに、

『俺を誰だとおもってんの？…2万人、連れてこい！！！』

劣等感にも似た感情を抱いている自分に、腹が立つ。

……あぁ、耳鳴りが始まった。

『…どんなトリック使ったかはしらねえけど、計画が狂っちまったなぁ。稀咲、』

やっと、手加減なしに殴れる。蹴れる。
十分、時間はやったからな。
そろそろ再開させようぜ、マイキー。

『……真一郎を亡くし、エマを亡くし、どうだ？

虚空(から)になった気分は？』

『……カタつけよーぜ、兄貴(ｲｻﾞﾅ)』