マリアに、懺悔。【1】 (ページ35)

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────次は、また俺から会いに行くから。

『マナカ』
『……どちらさまでしょうか、』
『は？俺のこと、わかんねーの？』

真っ白な髪に、透き通った紫色のおおきな瞳。

『……あ。イザナくん』
『ウン。久しぶり』

店員の私がそこから出るのを知ってか知らずか、裏口の扉のすぐ横の壁に背中をあずけて、彼はそこにいた。

『昔とずいぶん髪型が変わったから』
『そう？』
『そう』

いまにも閉じ込められそうな夜空。その暗闇の中で、イザナくんの髪の毛が神々しく輝いて見えた。星なんかよりも、うんと綺麗な。

『俺から会いに行くって、言ったろ』
『うん。そうだね』
『あん時は、真一郎に会いに行ったからノーカン』
『あはは、なるほどね』
『お前、バイト終わりいつもこの時間？』
『いつもとは言わないけど、これくらいになる日もよくあるかな』

『あぶねえな』

吐き出した吐息が夜に溶けた。

『イザナくん、心配してくれてる？』

『変なやつに襲われるぞ』

『心配しすぎだよ』

『んなことねえよ。

そんなんだから、俺みたいなのに追っかけ回されんだよ』

どういうこと？

私がイザナくんにそう返すよりより早く、お腹に鈍くて鋭い痛みが響く。途端に視界が揺れて歪んで、びりびりと指先まで痺れた。びたん、とだらしなく地面に崩れ落ちる。

正直なところ、今の瞬間で何が起きたのか分からなかった。

『わり。これでも手加減したつもり』
『いざなく、』
『別に死にはしねーよ。…そんな顔で見んな』

拳をぐー、ぱーさせながら、ほんのすこしだけ決まりの悪そうな顔をして私から目を逸らすと地面に散らばった私の荷物をかき集める。いやに楽しそうに、鼻歌を歌いながら。

『…お。あった』

イザナくんが取り出したのはお財布でもなくて、わたしの携帯。

『お前のこと信じてねえわけじゃねえよ。でもさ、一応、』

ぱかり、と開いて、

『ま。用心深いのに越したことはねえだろ』

さらりと笑って真逆に折り倒す。所謂、逆パカとかいうやつ。

『よし、じゃあ行こうぜマナカ』
『は、』

息ができない。恐怖なのか、殴られた痛みなのか。とにもかくにも息が苦しかった。
対して彼は地面にへたれこんだままの私を静かに見下ろしているのだろう。呆れたようにちいさくため息を着いた。

『ハタチ超えてるくせに根性ねーなお前』

私を軽々抱え上げ、そんなことを言うのだから驚いた。
君が殴ったんでしょうに、そんな横暴な。