マリアに、懺悔。【1】 (ページ32)

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…たかが中学生だろ。

ガキのままごととはワケが違う。

それに今の東万には圧倒的な欠陥がある。総長と副総長の不在。

なのに、なんでだ。

なのに、なんでアイツら目のはウザいくらいに光るんだよ。

電池切れの玩具みたく無様に転がる四天王の姿に、ふつふつと怒りが湧き上がってきた。
こんな中坊ひとりに、せいぜい50人しかいない格下に。

そもそも、下僕のくせに俺の言うことをすぐに聞かない鶴蝶も鶴蝶だ。あんなにやられて覚悟だのなんだの、そんなことほざく花垣なんかさっさとトドメ刺しちまえば良かったんだ。

『……カクちゃんじゃ、俺には勝てねえよ』
『…は？』
『目ぇ見りゃわかる。負けらんねえ、って、覚悟がねえ』

鶴蝶は完全に拳を下ろしていた。
そして俺が動くよりも先に、拳銃を手にした稀咲が鶴蝶を押し退け花垣の前へと躍り出る。

『じゃあ、テメェにはあんのか？タケミっち。

その、死んでもいいって覚悟がよぉ！』

『おい…！なんだよそれ…！！ガキの喧嘩だろ！？』

『稀咲！』

地面に伏せたまま動けない東卍のやつらが一気に血相を変えると、トリガーに指をかけた稀咲が満足したように口角を上げた。

なのに。

『……稀咲、お前、なにビビってんだよ』

銃口を向けられた花垣はあろう事か挑発して笑いやがる。

第7埠頭に響き渡った一発の銃声は、花垣の左足を撃ち抜いた。

『……どうしたよ稀咲、脚撃ったって、俺はしなねーぞ…』

虚勢を張っているのが分かりきった、痛みに震える声で花垣がつらつらと恥ずかしいくらいの綺麗事をぬかす。

『……おれは、マイキーくんみてえなカリスマもねー。

ナオトみてぇにかしこくもねえし、
ココくんみたいに、器用でもない。

ムーチョくんみてえに体もでかくねーし、

ドラケンくんみてえに喧嘩もつよくねえ。

だから。
おれにできることは、1つ。

諦めねえ…死んでも！あきらめねーコトだ！！』

びりびりと鼓膜が揺れた気がした。
……抜かせ。言ってろ。

でも、完全に花垣に場の雰囲気を持っていかれ、もはやどこか達観したような気持ちで2人を見ている自分がいる。
一歩怯んだ稀咲が構え直した。

『ぶっころす』

『やってみろ。

…簡単だろ。エマちゃんを殺したように』

2人の荒い息遣いだけがしばらく聞こえていたが、稀咲はふと、銃を下ろしたのだ。そして、空いた片手で花垣の横っ面を力一杯ぶん殴る。