マリアに、懺悔。【1】 (ページ18)

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『頼む、お前からイザナに言ってくれ。

………おれは、殺しは反対だ』

ベッドとテーブル、ランプを始め必要最低限なものしか置いていないこの、簡素な部屋。

窓もないこの部屋で、ベッドに腰を下ろしてぼんやり明るいランプの下で本のページを捲る細い指先が動きを止めた。

そして、ゆっくりとした動作で俺の方に振り返る。

色素の薄い、長い髪。睫毛の影がかかった、ビー玉のような瞳がじっと俺を見詰めた。

…俺は、藤宮まなかのこの瞳に見詰められるのが得意じゃない。

じゃら、と手足に付いた重い拘束具が音を鳴らす。
俺はイザナから預かっていた鍵でそれらを外すと、座る彼女に視線を合わせるよう屈んでもう一度。

『たのむ、イザナを、止めてくれ』

すこしだけ、情けない声が出た。

『まだ間に合う。今からでも、稀咲を止めろって、お前から伝えてくれないか。俺だけじゃイザナに届かない

イザナを助けたいんだ』

たのむ。

『…………私にも、無理だよ。きっと』

鈴の音のような澄んだ声。

いつか施設にいたころイザナが、好きだと、落ち着くと言っていた、こいつの声。

ちらりと見える、縫い目のある舌が痛々しい。

…イザナは知らない。こいつがちゃんと話せることを。
こいつの声が聞けないのを、少し後悔しているくらいだからな。

『そんなことねえ』

『私にはわかる。たぶん、今のイザナくんには私の言葉も届かない』

『……佐野エマを殺そうとしてる、稀咲が』

『……！』

『今日、イザナが墓参りに行ったのはただそれだけの理由じゃない。兄妹(ｷｮｳﾀﾞｲ)で、来るのを分かってるからなんだ。

佐野エマにその話を聞かせないために少し離れた場所で待たせるのも、きっとわかった上で、稀咲とこれを計画したんだ』

マナカが息を飲む。
ビー玉のような瞳がいっそう大きくなって、揺れた。

『エマちゃんを、？』

『マイキーを壊したいんだ、イザナは』

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