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マイキーを支える全てのものを壊したいんだ。
マナカはじっと考えて、ゆっくり口を開いた。

『だから、私を殴ったんでしょうね』

『……』

『そのクセして時々、子供みたいに寂しそうな顔するから。

…これって依存ってヤツかな。DV彼氏から逃げられない真理みたいな?…ふふ』

『なんで、』

『…でも、それで少しでも気分が晴れるならいいって思ってた』

『マナカ…』

『知ってる?イザナくんはね、私の顔は絶対に傷付けないの』

『……知ってる』

だから、余計変に見えるんだ。
人形みたいに整った顔の下が、痣だらけだから。

『なんで君が泣くの』

マナカはふふ、といつものように笑うとそっと俺の頭を撫でて、こう返した。

『鶴蝶。私にも、止められない』
『……っ、』

そんな姿で笑わないでくれ。いくら聖母だって、そんな顔しないだろう。笑いながら、泣いたりしない。


仕草や表情の割に、鋭く、尖った言葉。



『きっと、私もころされる』


ぱたん。と彼女は読んでいた本を閉じた。いつも帯を栞代わりに挟むのに、今日はそれをしなかった。




『……ねえ鶴蝶くん、それはそうと、どうしてこれ、外したの?』


切り替えるようにマナカは立ち上がり、ついさっきまで自分の手足に付いていた鉄の鎖を持ち上げ、がしゃりと地面に放った。

『…折り入って、頼みがある』

『かしこまってなあに』


軽い足取りで床を舞う彼女は、笑いながらそう返す。



『……マナカ。これで、今日が最後のチャンスなんだ。

イザナを助ける最後のチャンス…そして、お前が自由になる、最後のチャンスだ。


横浜第7埠頭。今夜、そこにお前も来てくれないか』



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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

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