天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。8【オリオンの刻印】

380、自分にないものを ページ34

「母ちゃんの弁当は、昨日の晩ご飯のおかずが入ってんだろ？でも美味い！おかず使い回してんのにすっげえ美味い！」

円堂家の一面が一つ明らかになったような気がする。が、何が言いたいのか意味不明すぎて一同は困惑している。

「だからいいんだ！みんな、自分にないモンを他の誰かからもらって強くなっていくんだ！あの技は、完璧にお前の技だ！」

少々回りくどい例えな気はしたが、おかげでのりかの顔から迷いが消えた。





「イノセント・ドライブ」で再度フロイが必殺技を打つ。

のりかは先程とは違う動きを見せた。これは新必殺技ではないかとAは心躍らせる。

「マジン・ザ・ウェイブ！」

波でできた魔神は、しっかりとフロイのシュートをキャッチした。

魔神の誕生を目の当たりにして、スタジアム中から歓声が上がった。ベンチからもつくし達の喜ぶ声が聞こえてくる。

「やったね、のりか！！」

心弾ませながらのりかに向け手を振る。

すっかり元気を取り戻したのりかは嬉々とした笑顔でAにピースサインを見せた。

どうやらのりかは自分の新必殺技が円堂の真似をしているのではないかと懸念していたらしい。

(それで円堂さんはああ言ってたんだ……)

円堂が言っていた言葉を思い返す。

(「自分にないものを他の誰かからもらって強くなっていく」……か)

まるで自分のことのよう。

私も私にないものをみんなから貰ってきたからここまで来れた。それは「あの人」からだってそうだ。





「いいね、こういうサッカー、実に良い」

技を止められたフロイは悔しがるどころか、楽しそうだった。

「次は決めるよ」とチームメイトの肩に触れて告げるフロイ。

その姿から、やはりフロイはオリオンに毒されてはいないと再確認でき、一星とAは安堵の笑みを浮かべた。

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