365、友達 ページ19
Aは氷浦の様子から異変を感じ取り、胸騒ぎがした。
今の氷浦は、先程のアツヤのように悲しい顔をしている。だから、氷浦までいなくなってしまったら…そう考えてしまい、恐怖が襲ってくる。
「だ、だからって私たちの関係は何一つ変わってないよ!でも不安にさせてたならごめん…!」
今の私は仲間を失いたくなくて必死だった。
「…本当?」
関係は何一つ変わってない__。そう言われた氷浦から憂いの表情が無くなってきつつあった。
Aもそんな氷浦の様子を見てホッとする。
そうだ。私たちは大丈夫だ。絶対に。
「当たり前じゃん!私たち、どんだけ友達やってると思ってるの!」
そう、氷浦とは長い付き合いなんだから。
だから絶対に、氷浦がいなくなることはない。
そう思ったのに。
私がそう言った瞬間、再び氷浦の表情が曇った。
「……友達……か」
ポツリとその単語を唱える氷浦。その小さな声の中にも悲しさが垣間見える気がする。
「…わ、私何か変なこと言った…?」
「……何で分かってくれないんだよ…」
オロオロと氷浦の顔色を伺っているAに、氷浦はもう少しで聞き逃してしまうくらいの声を発した。その声は少し震えている。
「…俺は…!」
氷浦は我慢できなくなったかのように立ち上がると、Aに向けて訴える。
「俺はAのこと、友達だなんて思ってない!!」
…と、普段の氷浦からは想像できないことを口にした。氷浦にしては珍しい、荒げた声で。
「…えっ…」
その言葉が、鋭くAの胸に突き刺さったのが分かった。
だが今にも泣き出しそうなのは氷浦の方だった。
「……ごめん、先に戻るよ」
氷浦はバツの悪そうな顔をして、宿舎へと戻っていってしまった。
「………」
Aは氷浦を追いかけることも出来ず、足が地にくっついたように動けなくなっていた。
今までの氷浦との思い出がガラガラと音を立てて崩れていく気がして、しばらくの間魂が抜けたように呆然としていた。
___ごめん、A。
氷浦は心の中でずっとそう繰り返して、Aに当たってしまったことを今更悔やんだ。
(今の関係が崩れるのが怖いからって、今まで全然前に進もうとしなかったのは俺なのに)
友達だと思ってない…なんて、自分で言ってこんなに胸が痛いのだ。Aはどう思っただろう。
「友達」なんて、本来言われて嬉しい言葉のはずなのに、今は素直に喜べなかった。
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飛鳥 - いちいちパスワード認証がでるのですか?なぜですか? (2020年3月25日 22時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 沙希子さん» あたたかいコメントありがとうございます!最近更新が遅れ気味で大変申し訳ございません。最終回に向けてこれからも更新を頑張っていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
沙希子(プロフ) - 更新焦らず頑張ってください!続き凄く気になります。 (2019年11月17日 6時) (レス) id: 03fe093666 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - そそそさん» コメントありがとうございます!1番ですか!?とても嬉しいです!ありがとうございます!!更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月23日 18時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
そそそ(プロフ) - 今まで見たイナアレ小説の中で1番おもしろいです。更新楽しみにしています! (2019年10月23日 10時) (レス) id: 924231b153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月29日 21時