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336、タツヤ ページ40

「A」

タツヤにこうして名前を呼ばれるのは2回目だ。今回も何の前触れもなく、唐突に。

Aと廊下で会うなりそう呼んできたタツヤに対し、Aはぽかんとした顔でタツヤを見た。

「やっぱりこれからはそう呼ぶことにするから」

そう迷いなく言うタツヤ。

Aもそれを断る理由があるわけもなく、こくりと頷いた。

タツヤは名前を呼ぶことまではできたが、まだそれだけで満足はしなかった。

もっとこの人と近づきたい。

「…Aも、名前で呼んでよ。前呼んでくれたみたいに」

「…!」

今のタツヤに引っ張られるように、Aまで赤くなった。



一度はやめたことなのに急にまた名前で呼べなんて、不思議に思われていることだろう。

だがタツヤはAに名前を呼ばれるのが好きだった。前に名前を呼んでもらった時、心地いい感覚に襲われたのは記憶に新しい。

そんな自分の気持ちから逃げないと決めたばかりだから。



「…俺の名前、忘れた?なら別にいいけど…」

びっくりしてすぐには呼んでくれないAにタツヤはむくれた。

「わ、忘れるわけないじゃん」

そう言ってもタツヤは顔を背けたまま。

タツヤの機嫌を直すには、こうするしかないようだ。

そしてAはまた、その名を口にする。

「タツヤ!」

そう呼びかけると、タツヤは顔を染めたまま花が咲いたような笑顔を見せた。

「…ああ」

いつもの大人びた雰囲気とは一変、今のタツヤは子供のようだ。それでいて可愛らしさがある。Aでなくてもときめいてしまうくらいの。

__ああ、やっぱり良いなあ。と、タツヤは幸せなこの瞬間を噛み締めていた。

「…けど前に名前呼びした時は普段通りでいいって言ってたよね?急にどうしたの?」

「もう以前の俺とは違うからね」

「?」



好きな人が幸せなら自分を選んでもらえなくたっていい、ずっとそう言い聞かせてきたけど。

そんなの綺麗事だ、そうタツヤは思った。

本当は何が何でも自分を選んでもらいたいはずなのに。

だから、これからはAに俺といる時が一番幸せだって思わせてやればいい。

これからは、好きな人に好きになってもらえる努力をしよう。

自分のしたいことをもう我慢しない。そう決意しただけでこんなに気持ちが楽なんだなと、タツヤは気づくことができた。

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作品ジャンル:アニメ
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紅葉(プロフ) - 夜空さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただいてとても嬉しいです!これからも更新頑張ります! (2019年9月29日 11時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - とても面白くて新しい更新を楽しみにしてます!タツヤの恋も応援したい!ヒロトの恋も応援したい!どうなるの〜汗 (2019年9月29日 2時) (レス) id: d246f2b775 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ドルチェさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです!これからも更新頑張ります!! (2019年9月23日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
ドルチェ - 紅葉さん,いつも楽しみにしてます!これからも拝読させて頂きます!頑張ってください! (2019年9月23日 12時) (レス) id: 697128a6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます!アツヤの登場でさまざまな人間関係が大きく変わっていく、ということをテーマに書いていく予定ですので、楽しんでいただけると幸いです。これからも頑張ります! (2019年9月14日 8時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月8日 22時

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