250、これで充分 ページ3
貴女「基山君が何かしてほしいことあったら言って良いからね。あの時のお礼したいし」
Aは深く考えることなくさらりと言った。
基山「…そんなの良いのに。俺はそこまでのことしたわけじゃないし…」
貴女「そんなことないよ。あの時は本当に助けられたし。私にできることなら何でも恩返しするつもり」
基山「……何でも?」
タツヤはピクリと反応を見せた。
基山「……それなら……」
それなら。
こんな風にずっと、俺の隣にいてほしい__
そんな言葉が出かかったが、グッと堪えた。
…流石にそれは無理だと。
基山「……じゃあ、一つだけ…お願いしていい?」
タツヤは必死に声を絞り出した。
貴女「お!良いよ、何かな?」
基山「…ヒロトと仲直りしてやって欲しい」
貴女「…えっ」
基山「難しいお願いかもしれないけど、ヒロトは仲直りしたがってるんだ」
「…吉良君が?」鳩が豆鉄砲を食ったようになったA。
今までのヒロトの態度を見ているうちは、ヒロトがそう思っているなど想像もつかなかったから。
基山「…うん。あいつ、意地っ張りなところあるから分かりにくいけどね」
貴女「……わかった。善処するよ」
仲直りできるのかまだ不安はあるが、タツヤがそう言うならと、Aは意を決した。
基山「……ありがとう」
そう言って笑うタツヤの顔は少しだけ寂しそうだった。
貴女「…それで…基山君のお願いってそれだけ?」
基山「…うん。俺はこれで充分」
貴女「…そう?」
これでいい。
二人が仲直りさえすれば、ヒロトがAに素直になれる日も近い。
…ヒロトなら、きっと西村さんを幸せにしてくれる。
そう信じているタツヤは、それ以上のことは何も言わなかった。
そこへつくしがやって来て、「写真撮ろうか?」と、A達にカメラを向けながら言った。
貴女「え、良いんですか?基山君、撮ってもらわない?」
基山「…えっ!で、でも…」
思わず近くにヒロトがいないかと探してしまうタツヤ。
…ヒロトに悪いかな?
仲間との旅の思い出としてなら…良いかな。
タツヤはそう自分に言い聞かせた。
基山「…お願いします」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年8月23日 13時