噎せ返るほど甘い匂いの中で

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検査結果を見ながら先生は眉間に皺を寄せた。


「何故か数値が上がってます。薬はちゃんと飲んでますよね？」
「はい、欠かさず飲んでます」
「そうですか……」


口元に手をあてる姿を不安な気持ちで見つめる。



事の発端は、二階堂が「なんか匂い強くなってない？」と言い出したことだった。

一人行動がある程度緩和されたとはいえメンバー以外はまだ怖いから、ゲストがいる時や密着したポーズが多い雑誌やラジオも北山と一緒。だから北山以外のメンバーと二人でロケに出たのは久しぶりだった。

個人の仕事もそろそろ入れられないかと言われ、北山以外との仕事を増やしていこうという話の流れだったが、その日一緒だった二階堂が休憩中言いにくそうにそう口を開いたのだ。


「ちょっと匂い強いかなって時もあったけど、気のせいだと思ってたの。だけど今日一緒にいて、やっぱり気のせいじゃないかもって」
「そうなの？」
「うん。ロケの時もだし、今も窓開けてるけどちょっとキツイなって思うくらいは匂ってる」


そう言って二階堂は、弁当を持って一番離れた椅子に座った。


「え、どれくらい匂う？ 最初と同じくらい？」
「そこまでじゃない。けど変な気持ちにはなっちゃうし、危ないから早く病院に行った方がいいと思う」


言いにくいことを伝えてくれた二階堂に礼を言い、そのあとは塗り薬をこれでもかというくらい塗り何とか無事にロケを終えた。




「プライベートなことを聞きますが、最近好きな人が出来たりしましたか？」
「え？」
「恋をするとフェロモンが増えると言われているので、可能性として聞いてみました」
「そうなんですね……でも特には……」


唐突な質問に驚いたが、今の自分には縁のない話だ。


「実は最近フェロモン症候群が完治したという報告があったんです。好きな人と両想いになったら匂いが消えたと」
「どういうことですか？」
「お互いの強いフェロモンで相殺されると考えられていますが、科学的根拠はありません。ですが匂いが消えるのは事実で、そこには何かしらの理由があるはずです」
「はあ……」


あまりにもファンタジーな話になってきて、やる気のない返事をしてしまう。
　

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