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「沢山持ってきたなー」
「だって何に使うかわかんないし」
そっかそっかなんて適当な返事をしながら、腕に吹きかけて匂いを確認し始めた。
「これが一番近いかな」
北山が選んだのは持っている中で一番甘い香水。
それを手首に二回プッシュし「これが普段」と鼻先に持ってくる。
甘さがふわっと鼻を通ったあと北山の顔がすぐそこに見え、あまりの近さに心臓が跳ねた。
「で、これが今」
何回か吹き付け匂いを確認し、再び手首を俺の鼻に近づける。
「あまっ!」
濃厚過ぎる甘さが鼻に付き、思わず顔を背けた。
「そんなに? まあちょっと濃いけど」
自分の手首をくんくんと嗅いでいる北山。
「ちょっとどころじゃないだろ。もしかして鼻が悪いんじゃない?」
こんな濃厚な匂いをちょっと、と言ってしまえる嗅覚が信じられない。もしかして鼻が悪いから匂いが効かないんじゃないだろうか。
「えー? そんなことないと思うんだけど」
ゆるゆると笑う北山が再び自分の手首を鼻に付けた時、伏し目がちな目とまつ毛の長さが目に入る。
その時、濃厚な甘さの中から微かに違う香りがした。
「あれ? なんか……」
「どした?」
顔を上げた北山の大きな目に見つめられた瞬間、その匂いがわっと俺を包む。
甘酸っぱくてフレッシュなのに、濃厚な甘さに負けない印象的な香り。
「香水つけてる?」
「付けてないけど」
「今日会った人に香水の匂いキツイ人とかいた?」
「いやー、男しかいなかったからなぁ」
なんか匂う? と襟元を掴み、くんくんと匂いを嗅いでいる。
「前に北山から甘い匂いがするって言ったの覚えてる?」
「ああ、うん」
「北山は飴の匂いじゃないかって言ったけど、違うと思う。今も匂ってるし。……もしかして同じ病気になったんじゃ……」
この匂いを嗅ぐと何とも言えない、胸が痺れるような気持ちになる。だからやっぱり病気なんじゃないかと怖くなった。
「いやいや、それはない。もしそうだとしたら周りの反応が違うはずだし、飲み会なんて行けないだろ」
確かに言われてみたらそうだ。でも、もしかしたらこれから発症するのかもしれないと思うと不安が拭えない。
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ちび(プロフ) - めっちゃわかります、私も匂い、香りとか良いですよね、記憶に残りますしね、私もめっちゃ色気感じます、好きな話でした。 (2023年4月27日 0時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» ちびさん、沢山読んでくださりありがとうございます。匂いってめちゃくちゃ色気あると思っているので匂いが盛り込まれている話を多く書いている気がしますが、文字から匂いを感じてもらえたら嬉しいです。匂いに関する話をまた書いた時は読みに来て下さると嬉しいです。 (2023年4月27日 0時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - こちらも読ませてもらいました、設定楽しいですね。イチャイチャめっちゃ嬉しくなりましたわ、可愛い2人ですね、でもこれFKは本当セクシーだから香りありそうですよね。いい匂いするね、なんか、のですね😊 (2023年4月16日 22時) (レス) @page19 id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 雅さん» 雅さーん!あの描写からKさんがいつもFさんを気に掛けているのを読み取ってくださりありがとうございます。そういうものとして書いていたので確かに!と思いました。どんな関係か分からない二人を書くのは久しぶりでしたが私も好きです!いつもありがとうございます! (2022年12月6日 20時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
雅(プロフ) - こんばんは!Kさんが予定があると断ったのに連絡してきたところ、Fさんの病気のこともあるけれど常に気にかけてるのが伝わって素敵でした!そして結局家に行っちゃうんですよね(*´ω`*)お互いがまだどんな関係位置にいるか分からない時のFKもとても好きです! (2022年12月4日 16時) (レス) @page14 id: 533dfc9d96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2022年11月26日 17時