僕はただ、28 ページ29
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やはり、僕の予想通りだ。
黄瀬が、灰崎を克服して越えていくことが。
会場内には彼女もいて、コート内の会話は聞こえずとも、彼女を見つけた灰崎に、黄瀬が何やら釘を刺しただろう場面も見受けられたが。
「征ちゃん、そんなにあの黄瀬涼太が気になるの?」
「……そうだね。涼太は化けるよ。そのうち厄介な相手になる。"俺"だってそれを感じている」
「……え、俺?」
「いや、こっちの話だ。僕も、涼太には注目しているからね」
「……そう。でも、まだ分からないじゃない。あの灰崎クン……だったかしら?彼だって、中学時代は相当強かったって話も聞くわよ」
「灰崎は」
「……?」
「……灰崎は、涼太には勝てない。絶対だ」
玲央も、何かを感じただろうか。
"僕"は「名前」で呼ぶ。だが、灰崎だけは「灰崎」なのだ。
何をどう間違っても、俺が僕になろうが、僕が俺に戻ろうが、きっと「灰崎」だ。
「ま、赤司が言うならそうなんだろねー。俺は強い奴とやれるなら何でもいーけど!」
「小太郎ならそう言うと思ったよ。まぁ、僕もこの試合は勝敗が気になって見に来た訳では無いしね」
「……この試合見たら、私自由にしていいんだよね?トオ」
「……あぁ、そう言えばそんなことも言ったね。良いよ、この試合が終わったらね」
神奈はすっかり気持ちが先に向いていた。
少なくとも、WCが終わるまでは神奈の所属は変えられないのだが。
その先は知らない。神奈をいつまでも縛る意味は、この大会がすぎればなくなるからだ。
「赤司」
そんなことを考えていた僕に、黛さんから声がかかる。
「何ですか?黛さん」
「気持ち悪い」
「辛辣ですね。……なら、試合の時の扱いの方が良いか?千尋」
「それはそれでムカつく」
「我儘ですね」
そんな会話を交わして、全くもって会話が前進していないことを敢えて言わないでいれば、黛さんは面倒くさそうに言う。
「お前、……何考えてるんだ」
その言葉の真意は、恐らくは別にあった。
だが、僕は敢えて答えた。
「何を考えているなんて、勿論この大会で優勝するための作戦ですよ」
完璧に計算された笑みを見せれば、黛さんは顔を顰めて、皮肉めいた声色で「くだらない嘘だな」と呟いた。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時