僕はただ、25 ページ26
*
嗚呼、どうして伝わらないのだろうか？
僕は、僕はただ、君の瞳に映っていたかっただけだったのに。
侮蔑の瞳でもいいと思っていた。彼女の瞳に、僕が存在するのなら。
だが彼女は……その瞳から、視線から、僕と言う存在を消そうとしている。
それが悔しくて、やるせなくて。
既に僕を通り越して歩き去ろうとした彼女の肩をぐっと掴んで、振り向かせる。
彼女の「何なんですか」の声を聞くよりも前に。
彼女が油断しているそのうちに。
一気にその距離を詰め、肩を掴んでいた手を彼女の後頭部に回し、僕は確かに彼女の唇を奪ったのだ。
彼女は、その瞳を大きく見開いてその視界いっぱいに僕を映した。
……嗚呼、美しいな。僕はただ、この瞳に映っていたかった。僕が、俺が、欲した彼女を手に入れて。
僕だけを、見ていて欲しかった。
今この時だけは、彼女は誰のものでもなく、僕だけの彼女だった。
これで彼女は、僕を忘れることも、その瞳から、記憶から、僕の存在を消す事が出来なくなった。
直後、少し油断していた僕は、彼女に胸板を押されよろめき、彼女から離れた。
「何を、してるんですか……そんなに、嫌われたいんですか……」
「嫌われたいなんて思うはずがないだろう？だが……こうでもすれば、少なくともこれから、Aが僕を忘れることは無い」
「……酷いですよ、中学の時から、本当に」
そう言って睨みつけてきた彼女を、僕はもうただ、愛しいとしか思えなかった。
気付いていないのだろう。彼女が今、他の全てを忘れ、僕だけをその瞳に映していることに。
それから、必死にこの場から逃れようと動こうとした彼女の腕を掴む。
「っ、私を待っていてくれる人の元に戻ります！」
「僕だって、君をずっと待っているよ」
「そう言う意味ではありません……！離してください！言ったでしょう？答えはNOです、何をされても揺らぎません、いい加減にしてください……こんなだから私は、あなたよりも……！」
彼女はそこまで言って、ピタリとその口を止めた。
その先が彼女の口から紡がれることはなく、ついに彼女は僕の腕を振り払って、走り去って行った。
挿絵:薫様
使わせていただきました。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です！ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです！！これからも頑張ってください！！ (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年2月9日 19時
