小さな箱。7 ページ8
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ようやくホームルームが終わったと思えば、今度は学年全体のオリエンテーションだとか何とか。
体育館に移動すると、もう並び順はどうでもいいらしく、既に仲良くなった数人と適当に座っている姿を見かけ、何でもいいのかと思い、羽屋さんの近くにすっと寄って行けば、羽屋さんは少し驚いたような顔をした。
「き、黄瀬くん?」
「一緒、いいっスか?」
「良いけど……ほら、友達とか」
「あー……まだいねぇんスよ。友達作ろうにもタイミング掴めなくて」
「私も、昨日の入学式で知り合った子、違うクラスでね。他の子といるみたいで、私も一人」
「ならちょうどいいっスね!どーせオリエンテーションとかはグループ作んなきゃいけなかったりするし、羽屋さんが嫌じゃなければ、どうっスか?」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。ありがとね、黄瀬くん。声掛けてくれて」
「いいんスよ!てか、呼び方、別に"黄瀬くん"じゃなくてもいいっスよ?」
「いや、黄瀬くんの方がしっくり来るし……そう呼びたいから"黄瀬くん"で」
「そうっスか?じゃあ……オレが羽屋さんのこと、羽屋っちって呼ぶことにするっス」
オレがそう言って笑うと、羽屋さん、基羽屋っちは何だか微妙な表情をした。
ピリピリと感じていた視線は、オレの後ろから。
……これだから嫌なんスよね。何でモデルだからって、何でもかんでも見張られてる気分でいなきゃなんないんだか。
有名人とかが誰かと結婚する、とかいうニュース見て、確かに「嘘でしょ」って言いたくなる気持ちはオレだって分かる。
でも、有名税だーとかって週刊誌が追い回してんのだけはいつも理解出来なかった。
オレの後ろから感じるその視線は、それと全く同じもの。
鬱陶しいんスよ、どうせオレの顔しか見てないくせに。
そう思えば、羽屋っちにそんな視線を向ける誰かへの嫌悪感が自分の中で高まっていく。
それを顔には出さず、この先オレがこうして羽屋っちと一緒にいるためにどうするべきか、どうにか足りない頭で考える。
……出会って二日目、ただの友達のためにここまでしようと思うの、良く考えれば変なんスよね。
ふとそんなことを思いながら、笑顔を絶やさないように心がけ、オレの感情を誰にも悟らせないように取り繕って、その日を終えた。
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年9月26日 22時