難しい。8 ページ42
*
「……んー、ま、こんなとこだろ。以上、独白終了。……何でAが泣きそうになってんだよ」
「……あの時、それをちゃんと言ってくれていたら……神奈どころか、赤司さんも、テツヤさんだって和成を責めたりしませんでしたよ」
「いやそれは……ないんじゃね」
現在、とあるマンションの一室。
ちょっとした痴話喧嘩から、何がどう転んでこの話に発展したのかとんと思い出せないものの、どうやらAの怒りも鎮まったらしい。
むしろちょっと申し訳なさそうに眉を下げて俺を下から見上げていた。
それからどうにか立ち直ったのか、Aは柔らかな笑みを浮かべて、言った。
「……猛アタック、してくれてたんですね」
「そ、れは!言葉のアヤってやつで!そ、そんなガツガツいってもなーって思ってちょい遠慮だって……あ、いや、本気!本気だったけどな!?」
「ふふ……何でも良いですよ。怒る気も失せましたし、私も頭に血が上って少し言い過ぎました。……仲直り、してくれますか?」
すっと差し出された手を、俺は迷いなく握り返す。
「当たり前だろ!てか、俺Aが居なきゃ生きてけねーもん」
「大袈裟です」
「まさか。結構マジのマジよ?」
「お世辞はいりません」
そう言いながら俺から顔を背けたAだったが、耳だけが赤くなっていた。
バレバレだし、余りにも分かりやすい照れ隠し。
昔はもっとツンツンで、飄々としてて。
昔の俺が今のAを見たら、「誰だこれ?」と抜かすだろう程に変わったAを見てたら、なんか、あぁやっぱ好きだわって思えて。
目ぇ細めて温かい目を向けていたようで、Aから「あなたはどこのタヌキロボットですか」とのツッコミを受け、「いやネコだわ。てか俺ロボットじゃねーよ」と笑って返した。
「……俺やっぱさ、Aに会えて本当に良かったって思う」
「何ですか、藪から棒に」
「ふと思っただけだって。俺って幸せもんだなーってさ」
「それは良かったです。……私も大概、幸せ者ですね」
あの時、幼馴染への想いを俺が持っていなければ。
きっと、俺が彼女と出会うことは無かった。
キセリョと幸せになれ、なんて、悪いけど願ってやらない。
俺がそんなん願わなくたって、お前は勝手に「幸せだ」って、笑うだろうから。
fin.
*
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年9月26日 22時