難しい。5 ページ39
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二人で遊ぶ場所と言えばたかが知れてるけど、その中でもその日、Aが「行きたい」と言い出したのは俺達の住む近所の公園だった。
「ほんとにカラオケとかじゃなくて良かったのかよ?」
「ブランコに乗りたい気分だったからいいよ」
「ブランコに乗りたがる高1て」
「今日は5歳児の気分だからいいの」
「マジかよ」
公園に着いて早々に宣言通りブランコに駆け寄って行ったAを追い掛けて、俺も隣のブランコに座った。
「あ、和成もブランコやりたかったんだ?言えばいいのに。恥ずかしくないよ」
「いや座ってるだけだわ!」
そう返した俺に、Aは「なーんだ」と詰まらなさそうにブランコを漕ぎ始めた。
黙々とブランコを漕いでいたAだったが、すっかりAの漕ぐブランコが高く上がった頃、不意に口を開いた。
「ねぇ」
「んー?」
「和成はー、一目惚れとか、……んん、信じる?」
「……は?」
「だから、」
ゆるゆると漕ぐスピードを落として、勢いが消え始め、Aはブランコから手を離して「っと、」と次の瞬間には地面に着地して、俺を振り返った。
「一目惚れ。信じる?」
「……一目惚れ、ね」
「そう」
「何で?」
「え?」
「A今までそう言うの、気にした事無かったじゃん。何で?」
「あー、えっと。ほら、今日友達になった子が、入学早々一目惚れしたって告白されたって聞いて」
「ふーん……で、俺に聞いてどうすんの?」
「や、うん、特に意味は無いんだけど……そういう話になって気になったから」
「ま、いいけどな?……俺は信じねーよ。一目惚れなんか」
「そう、なんだ」
「一目惚れって見た目じゃん?中身なんか分かんねーんだし」
「そ、っかぁ……」
「だからその友達には"とりあえずやめとけ"って言えばいいんじゃね?」
「え?……あっ、うん、友達ね。伝えとく」
当然、Aが嘘をついてるのだって全部分かった上で、俺はその誰かを___黄瀬涼太を牽制した。
こうすることでしか、Aが離れていかない方法が分からない。
……いや、こんなことしたって、きっといつかAは離れて行く。
分かっていても、認めたくなかった。
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年9月26日 22時