検索窓
今日:18 hit、昨日:1 hit、合計:47,171 hit

小さな箱。30 ページ31

*








オレが一歩Aに近づくと、ビクリとまたAの肩が揺れる。

それをお構い無しに一気に距離を詰めて、オレはAを抱きしめた。



「……やっぱ泣いてていいから、我慢しないで泣いていいから……ちょっとだけ、訂正させてほしいんスけど」


「……、」


「A、いつだってオレばっかりだ。……痛いくらい、オレばっかりだ。高校の時からずっと……」



Aは腕の中で体を震わせながら、それでも静かに聞いていた。



「……Aに泣いて縋ってもらえるくらい、オレは好かれてるって……自惚れて来た。でもAは、オレもそれくらい……や、それ以上に、オレから好かれてるって、ずっと……思ってなかったんじゃないっスか?」


「……、」



オレは、意を決してAの体を自分から離して、真剣な顔で告げる。



「オレ、ずっと……Aに言いたかったことがあるんスよ。……聞いてくれる?」



今度は、オレが言う番だった。

Aが涙を拭いながら、こくんとひとつ頷いた。


オレは大きく息を吸って吐き出して、ゆっくりと話し出す。



「こんなに泣かせちゃう前に、言っておくべきだったっスね。オレ……ずっと、覚悟だけ、出来てなくて。……遅くなってごめん」



そんな言葉を口にしてから、更に続けた。



「……8年。高校の入学式で出会ってから、もう……そんなに経つんスよ。……オレ、バカだから……Aのこと、きっと今までも知らないだけで、いっぱい泣かせてきたと思う」



現に今、Aは泣いてる。オレのせいで、泣かせてしまってる。



「……高校ん時は付き合っててもバスケばっかで、まともなデートのひとつも出来なかったし、卒業してからも遠恋だったし……Aが会おうって言ってくれても、オレが仕事で会えなかったり……寂しい思いも、させたんじゃないかって、」



ていうか、オレが寂しかった。

オレも、寂しかったから。



「……だから、オレにはAを幸せに出来ないんじゃないかって、すごい悩んで。……でも、……手放したく、なくて」



そこまで言って、オレはAの前に膝を折って、Aを見上げた。







*

小さな箱の幸せ。→←小さな箱。29



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
63人がお気に入り
設定タグ:黒子のバスケ , 黄瀬涼太   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2015年9月26日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。