小さな箱。30 ページ31
*
オレが一歩Aに近づくと、ビクリとまたAの肩が揺れる。
それをお構い無しに一気に距離を詰めて、オレはAを抱きしめた。
「……やっぱ泣いてていいから、我慢しないで泣いていいから……ちょっとだけ、訂正させてほしいんスけど」
「……、」
「A、いつだってオレばっかりだ。……痛いくらい、オレばっかりだ。高校の時からずっと……」
Aは腕の中で体を震わせながら、それでも静かに聞いていた。
「……Aに泣いて縋ってもらえるくらい、オレは好かれてるって……自惚れて来た。でもAは、オレもそれくらい……や、それ以上に、オレから好かれてるって、ずっと……思ってなかったんじゃないっスか?」
「……、」
オレは、意を決してAの体を自分から離して、真剣な顔で告げる。
「オレ、ずっと……Aに言いたかったことがあるんスよ。……聞いてくれる?」
今度は、オレが言う番だった。
Aが涙を拭いながら、こくんとひとつ頷いた。
オレは大きく息を吸って吐き出して、ゆっくりと話し出す。
「こんなに泣かせちゃう前に、言っておくべきだったっスね。オレ……ずっと、覚悟だけ、出来てなくて。……遅くなってごめん」
そんな言葉を口にしてから、更に続けた。
「……8年。高校の入学式で出会ってから、もう……そんなに経つんスよ。……オレ、バカだから……Aのこと、きっと今までも知らないだけで、いっぱい泣かせてきたと思う」
現に今、Aは泣いてる。オレのせいで、泣かせてしまってる。
「……高校ん時は付き合っててもバスケばっかで、まともなデートのひとつも出来なかったし、卒業してからも遠恋だったし……Aが会おうって言ってくれても、オレが仕事で会えなかったり……寂しい思いも、させたんじゃないかって、」
ていうか、オレが寂しかった。
オレも、寂しかったから。
「……だから、オレにはAを幸せに出来ないんじゃないかって、すごい悩んで。……でも、……手放したく、なくて」
そこまで言って、オレはAの前に膝を折って、Aを見上げた。
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年9月26日 22時