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小さな箱。28 ページ29

*








……そう言えば、こうして今日もAはオレの部屋に来たけど、大学を卒業した今、随分前からしていた約束を実現しただけと言えばそうだ。

Aが卒業したら一緒に暮らそう、と言うのは、3年前くらいに言ったもの。


だから、Aは親にもちゃんと話をつけて、こうしてオレと暮らすことを了承してくれたわけである。

まぁ、一緒に暮らし始めたからって、何かが急変するなんてことはなく。特に何も変わらなくて、ただぼんやりと穏やかに時が流れているだけだった。


同棲し始めて一年が経った頃には、Aを迎えに行った時よりもオレがそわそわしているのがバレバレになってきていて。



「おかえり、リョウ。疲れてるとこ悪いんだけど、ちょっと話があるから聞いてくれる?」


「へ、……あ、ただいま……いい、スけど……?」



その日、珍しく玄関まで出迎えに来ていたAに少し驚きつつ、その背を追ってリビングに入ると、Aはダイニングのテーブルを指さした。

大人しくオレが座ると、Aがその正面に座った。


そして、ほんの少しの沈黙のあと、ゆっくりと口を開いた。



「……リョウ。私に、隠してることない?」


「……え?隠してること?オレが……Aに?」


「そう。……隠してること、ない?」


「ない……っスよ?」


「……じゃあ、何で最近、そわそわしてるの?」


「そわそわ?……オレが?」


「他に誰がいるの?リョウ、最近よそよそしい時あるし……なのに何も無いって言うし。良いんだよ、一緒に暮らしてるけど、他に気になる人がいるとか、そう言うなら……隠されるより、言ってくれた方がいい。だってそうなら、私相当邪魔でしょ?分かってるつもりだよ、リョウは素敵な人だから……私なんかに勿体ないんだって、私が一番分かって___」


そこまで一気に捲し立てたAの、その言葉を遮るようにオレは言った。



「Aさ、何も分かってないよ」



泣きそうな顔でオレを見るA。

泣きたいのは、こっちだよ。一番分かって欲しい人に、一番分かってもらえない。


オレが女が苦手なの、知ってるのに。

オレがそれでもAを選んだって、知ってるはずなのに。







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設定タグ:黒子のバスケ , 黄瀬涼太   
作品ジャンル:恋愛
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2015年9月26日 22時

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