小さな箱。22 ページ23
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新しい春を迎えた。
一年の頃は赤点ばっかで卒業できるか怪しいと先生にもあれだけ心配されていたオレだったけど、Aと付き合って一緒に勉強するようになってから、赤点に変わりはなくても多少点数は良くなっていった。
最後の最後に先生は「この提出物を期限内に出せたら内申をやる」と妥協してくれたほどだった。
そうして、オレは海常高校を無事留年することなく卒業し、兼ねてから考えていた、「仕事に専念すること」を選択した。
元々馬鹿なオレじゃ、上級学校に進むのは無理だった。それなら、今のオレを必要としてくれる世界に集中しよう、と言う結論に至ったからだった。
Aも応援してくれたし、オレなりに頑張ろうって決めたんだ、とかつての仲間に報告した途端、赤司っちが良い笑顔で「将来オレが父の仕事を継いだら、お前をうんと使ってやろう」と言ってくれた。
この先もかつての仲間___否、最高の友人達と疎遠にならずにいられそうだと喜んだオレに、Aもまた嬉しそうに「良かったね」と笑ってくれた。
そんな訳で、4月。
モデルだけではなく、もとより「やってみないか」と声をかけてもらっていた、俳優という仕事にオレは手を伸ばしたのだ。
バスケはもう趣味としてしか出来なくなる。
火神っちや青峰っちはバスケの世界でずっとやって行くと決めてアメリカに行っちゃったけど、オレはそれを羨ましがったりなんてしない。自分で決めた道に、不満なんてないから。
それに、別にその道を選ばなきゃ友人達と疎遠になってしまうような、そんな希薄な関係じゃない。
ぶっちゃけ言うとバスケを続けるって決めたのはその二人だけだし、海さえ越えた遠い所に行ったのも二人だけ。他はみんな東京近辺にいるし。
と言うか、そのうちみんなふらっと集まって大騒ぎするに決まってる。
仕事は大変だけど、
確かに、ベテランの俳優とか見てれば、オレはそれをその通りに習得出来る。だけどそれじゃ意味が無いことは、現場に入ればすぐに分かる。
人を真似すれば、そこに"オレ"はいないから。
そんな感じで、他を顧みる余裕が、オレにはあまり無かった。
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年9月26日 22時