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小さな箱。21 ページ22

*








二年になって、三年になった。

先輩達はどんどん卒業してって、オレ達の代になって必死こいて練習して。

でも、やっぱりオレ達はてっぺんまでは行けなかった。

ずっと、ずっと頑張ってたけど、届かなかった。



「リョウ、お疲れ様」



三年最後のウィンターカップ、準々決勝で赤司っちと当たって、負けて。オレ達海常の冬も終わった。

その、試合終了からミーティングを済ませ、各自解散した後の帰り道。


忘れ物したから、とわざわざ学校の部室まで戻って来たそこで、一年のあの日以来呼び方をお互いに改め、三年の今、すっかりと恋人らしくなった彼女、Aを横目で見てから、オレは言った。



「……バスケ、」


「え?」


「オレ……すっげー楽しかったっス。今まで何やっても続かなかったけど、バスケだけは……違った。オレ、きっとその瞬間を知るために生まれてきたんだって言えるくらい、楽しかったっス!」



オレがそう言って笑うと、Aはなんとも言えないような顔で、呟くように言った。



「そっか。……良かった。リョウがそういう風に思ってくれて。幼馴染が中学の頃に悔しいって泣いてたあの記憶も、これで少しは報われるかな」


「はは……中学ん時の話は勘弁して欲しいっス」


「でも、確かに中学時代……楽しかった時も、あったでしょ?」


「え?そりゃ……あったっスけど」


「私達もね、楽しかったよ。帝光に負けたのは本当に悔しかったし、絶望もしたけど……楽しかった記憶のが、多いから。だから、リョウだってきっとそのはずって思ったら、なんか……帝光をちょっとでも恨んでた過去の自分が、馬鹿みたいだなって」


「恨んでいいっスよ。Aにとって、あの頃のオレ達が最悪な存在なのは分かってるっスから」


「恨まないよ。……だって、私今、リョウのことすごい好きなんだよ」


「へ、」


「リョウが好きなら、その過去まで全部、好きでいたい。過去は消えないけど、それをやってた頃のリョウを置いていったら、それは、本当に私、リョウが好きって言えるのかなって」



Aの話は難しい。

難しいけど、何となく、言いたいことは分かった気がした。

でもオレは難しいことは言えないけど、嬉しかったから。



「オレもAの全部好きって言えるようになりたい。教えてほしいっス。……ぜんっぶ!」









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設定タグ:黒子のバスケ , 黄瀬涼太   
作品ジャンル:恋愛
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西谷彩香(プロフ) - kirakirahikaru0さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!元々4年前に書き上げた作品でしたが、未だこうして誰かに見て貰えるというのはありがたいです。本当にありがとうございました! (2019年6月20日 5時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
kirakirahikaru0(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!最後はうれしくて泣いてしまいました。 (2019年6月20日 1時) (レス) id: 094bc50104 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます!この作品のリメイク更新も進んでいないので、終わり次第考えたいと思います。ご意見ありがとうございました! (2019年4月27日 19時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 祥吾様の小説も書いて欲しいです (2019年4月27日 17時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - イチゴ・オーレさん» ありがどうございます!これからもよろしくお願いします!良ければ、他作品もご覧下さい! (2015年10月18日 11時) (レス) id: b540071b0b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2015年9月26日 22時

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