小さな箱は幸せの印。【黄瀬涼太】

小さな箱。10 ページ11

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その日の放課後、無理を言って羽屋っちに部活の見学に来てもらった。

笠松センパイが女子苦手なのはわかってたし、オレがあまり女子にいい顔をしないのを知ってた周りがマネージャーを諦めていたと言うのに、そのオレが女子を連れてきたからもう全員ビックリしていた。


羽屋っちは「本当にいいの？」とか「女子に妬まれないかな」と諸々心配していたものの、いざ体育館に来れば選手達を目に映した瞬間、じっと観察を始めたのを見て、オレは桃っちを思い出した。

よく、練習中にオレ達を見ていた、あの桃っちの目に似てる。

菊池を疑ってたわけじゃないけど、改めて本当何だなぁと実感しつつ、オレもセンパイ達に混ざって練習を開始した。



「黄瀬お前……っ、何でお前が女を連れて来るんだよ！」


「何でって言われても……いいじゃないスか、羽屋っちマネ経験あるらしいし優秀っスよ？きっと」


「そういう問題じゃないさ、黄瀬。分かるだろ、笠松は女が苦手だからな」


「森山センパイ」


「まぁ俺は大歓迎だけどな……！」


「誰もお前の意見は聞いてねぇよ森山ァ！！」


「でもそう言うの抜きにしてちゃんと考えて欲しいんスよ！オレはまだしも、マネ業は一年の仕事じゃないっスか！」


「それお前が言うことか？他の一年からしたら嫌味でしかねぇだろ」



笠松センパイの呆れたようなその声に、「そうなんだよなぁ」と思いながら羽屋っちを視界の隅に映せば、休憩に入る前にものを準備しているのだろう同級生達を手伝いながら談笑しているのが見えた。

当然ここは男子部。男子しかいない。


分かりきってることなのに、何故かもやもやして、胸の辺りを抑えながら首を傾げた。



「何してんだ黄瀬」


「いや……何でもないっス」


「気分悪いなら動けなくなる前に帰れよ」


「そう言うんじゃないから大丈夫っス」


「ならいい。無理はすんなよ、分かったな？」


「分かってるっスよ」



笠松センパイはそれから、羽屋っちをいつも以上の仏頂面で見ていた。


どうやら笠松センパイなりに受け入れる努力をしようとしているらしい、と小堀センパイが耳打ちしてくれた。

なるほど。じゃあ、睨んでる訳じゃなくて、単純に必死に慣れようとしてるだけだから怖がんなくていいって、後で羽屋っちに教えなきゃ。







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