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私が涙を流してからしばらくすると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「何をしているのだよ、黄瀬!」

「あ、緑間っち」

「っ緑間くん?」

怒号ともいえるその声はあまりにも大きくて、驚いて振り返る。涙で視界が若干ぼやけていたけど、身長が高く肩幅も広いそのシルエットから、やはり彼が緑間くんであるとわかる。

「橋本……」

泣いている私を見た彼は、どこか苦しそうな声で私の名を呼んだ。

「……っ!」

私は急いで顔を前に戻し、緑間くんの方から黄瀬くんの方へと向ける。そして、すぐに両手で涙を拭った。

(いけない……!泣いちゃダメ……)

どうにかしてこの涙を消さなくては、と慌てて乱暴に目元を擦っていると、「目が腫れちゃうからダメっスよ、Aっち」と黄瀬くんが声をかけてきた。
しかし、それがさらに緑間くんを刺激したらしい。

「黄瀬……橋本に何をしたのだよ」

その声は、今まで聞いた緑間くんの声の中で一番低くて……涙が引っ込むぐらいには、怖かった。

「えー!俺なんもしてないっスよ!」

黄瀬くんが慌てて否定するが、緑間くんは聞き入れず、不信感を露わにしながら私の右腕を掴んだ。

「嘘をつくな」

「えっ?」

「緑間くん……?」

そして、彼は黄瀬くんを睨んでこう言った。

「黄瀬。これ以上、橋本に迷惑をかけるな。……行くぞ、A」

かと思えば、急に私の名を呼んで、私を引っ張って歩き出した。

「え、あ……」

びっくりしてしばらくそのまま引きずられていたが、ハッと我に帰る。

(違うのに……黄瀬くんは何も私にしていないのに……!)

すぐに私は黄瀬くんに対する誤解を解こうと、緑間くんに話しかける。

「緑間くん」

「うるさいのだよ、橋本。黙ってついてくるのだよ」

しかし、彼は私の話も聞いてくれなかった。

「っ……」

そのまま私は、緑間くんに気圧されて、口をつぐんでしまった。申し訳なくて、せめて口パクでも謝ろうと黄瀬くんのいる後ろを振り返ると、彼は少しやれやれといった表情で、私に手を振ってくれた。

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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時

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