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秀徳高校バスケ部の合宿から1、2週間が経った。それからはほとんどというか、全く緑間くんと会っていない(もちろん高尾くんとも)。そもそも連絡先知らないしね。
インターハイ出場を惜しくも逃した秀徳バスケ部が、次に公式の大きな大会に出るのは冬、ウィンターカップということで、私の写真部の活動もしばらくお休みだ。
一応、練習風景の撮影も可能だが、合宿中に充分撮れたし、夏休み中に写真を撮るためだけに学校に行く必要性を感じないため、夏休みは家で過ごす日々を送っている。
家にいるからといって、別に何もしていないわけではない。計画的課題を進めたり、読書やピアノなど趣味にも勤しんでいる。
中学の頃はほぼ毎日部活だったし、昨年も受験勉強ばかりしていたし、のんびりとした夏休みは久しぶりだった。こんなにゆったりとしていて大丈夫なのか、逆に不安ではあるが、まぁ問題はないだろう。
一方の梨花は、毎日部活動が忙しいらしい。朝早くに学校へ行き、夕方に帰ってくる日々を送っている。たまに聞いてもいないのに、高尾くんや緑間くんの話をしてくる。最近は緑間くんの話題が多い気がする。
だけど梨花は、課題に関して全く心配ないと思う。勉強が得意だから、すぐ終わるだろう。
『2つ、気に入らないことがあるのだよ。1つは、お前が橋本梨花と間違われること。否、間違われても怒らないお前が気に入らないのだよ』
ふと、あの日の彼の言葉を思い出す。
(別に、好きで間違われてるわけじゃないんだよなぁ……怒ってないわけでもないし)
むしろ、嫌である。たぶん、梨花はそうでもないだろうが、私は非常に不快である。
『お前はもっと自分に正直になって、自分を主張すべきなのだよ』
でも、彼にそう言われて、もしかしたら自分は、気付かぬうちに諦めていたのだと思った。自分が主張してもどうせ梨花の方が、と。
「……はぁ」
せっかく幸せな夏休みだというのに、どうして緑間くんや梨花のことを考えて、イラついているのだろう。馬鹿なのか、自分は。
私は頭を横に揺らし、その思考を振り払った。
すると、コンコンと部屋の扉が鳴った。お母さんかな、と思ったが「お姉ちゃん、ちょっといい?」という問いかけに、その音の主が梨花であることを知る。
「どうぞ」
私は机の課題を片付けてそう言った。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時