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私の部屋に入ってきた梨花はどこか塩らしかった。思い返せばそもそも、彼女がノックをすること自体が珍しい気がする。いつもなら、構わず勝手に入室してくるはずだ。
何か重大な話なのか、そう思って私は体ごとしっかり梨花に向けた。
「あのね、お姉ちゃんに話したいことがあるの。その、怒らないで聞いてね」
いつもハキハキ喋る梨花が、こんなにモジモジしてるなんて、何のことなのか少し気になっている自分がいた。
「うん。なに？」
「あのね、私……好きな人ができたの」
「へ？」
梨花の言葉に私は拍子抜けする。私のリアクションが意外だったのか、梨花も不思議そうな顔をする。
「え、怒らないの？」
「あーうん……」
いつもなら恋愛関係の話……恋バナをするとイラつく私だが、あまりに突然の告白にそれすら忘れる。というか……
「正直、いつもなら……同じタイミングでそういうこと思うのに、今回はそうじゃないから、単純に気になる、かも」
「え……」
私たち双子のこういう告白は、だいたい同じタイミングになるし、その相手も同じなのだ。だから、梨花と恋バナをするといつもイラついてしまうのだけど、現状、私は誰か気になる人がいるわけでもないし、そもそも恋のことは考えていない。新鮮というか初めてのことなので戸惑った。たぶん、梨花もだろう。
「そ、そうなの？私、てっきりお姉ちゃんもだと思ってたんだけど……そっか、そうなんだ……」
それまで身構えていた梨花だったが、緊張が解けたのかため息をつく。
「で、誰が好きなの？」
別にすごく気になるわけではないが、そもそも好きな人が出来たとわざわざ私に言うくらいだから、覚悟はできているのだと思っていたが、
「え！き、聞くの？！」
茹で上げられたタコのように赤面する梨花。
「ダメなの？」
そう返して「高尾くんかなぁ」とぼんやり思っていると、梨花は一度大きく深呼吸をしてからこう答えた。
「ふぅ……。あのね、私の好きな人はね
緑間くんだよ」
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作者名：ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時：2022年5月10日 16時
