今宵、暁が焦がる頃に

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洗い場へ消えた2人を見て、岩本は阿部に声をかける。
岩本「阿部、大丈夫か」
首を横に振る阿部に、佐久間は「大丈夫じゃない？さくまの頭撫でる？」と見当違いの対処法を出す。
阿部「……思い出しちゃった…」
佐久間の頭を撫でて気持ちを落ち着かせているつもりなのだろう。
それでも震えた声で彼は言う。

宮舘「そうかい。じゃあ今日はもう部屋へお戻り。片付けは特別に私がやってあげよう」
佐久間「ねぇ！ぼくあべちゃんに付き添っててもいいー？」
宮舘「いいよ。佐久間の分は翔太がやってくれるから」
渡辺「は！？え！？」
突然名指しされ動揺する渡辺を尻目に、佐久間は阿部を連れて部屋を出ていった。

渡辺「何で…」
宮舘「誰にだって思い出したくない事の1つや2つはあるだろう？」
渡辺「そうだけどさぁ…」
宮舘「翔太だって、あるじゃないか」
渡辺「あるけどぉ…はいはい、わかりましたよー…」
結局言い負かされた渡辺が、宮舘の後を追うように洗い場へと向かう。

岩本「ラウール、今日もふっかの所に行くのか？」
ラウール「行くよー！昨日「明日もナデナデしてね！」って約束したもん！」
岩本「そうか。…あいつは大分マシになってきたか」
ラウール「うん！最初に比べたらね！ふっかさん、たまにだけど笑ってくれるようになったんだよ！」
岩本「おぉ、そりゃあすげぇこった。…俺も何とかしてやりたいんだがな」
ラウール「だーいじょーぶ！僕もずっと照くんはいい人だよー！って言ってるよ！いっつも「知ってる」って返ってくる！」
岩本「ありがとうな。ほら、お前も早く片付けてこい。ふっかのとこに早く行きてぇだろ」
ラウール「うん！」

パタパタ、とお盆を持って駆けていくラウールを見ながら、相変わらず可愛い奴だな、と微笑ましく思う。
岩本「…「知ってる」か…」
知ってて尚、怖がられる理由。皆目見当につかない。
岩本「……どう、してやればいいんだろうな」
そう呟いて山吹色の盆を持ち上げると、騒がしい洗い場へと歩を進めた。

参:唯ノ束ノ間ノ紛ラワセ→←＊

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