百十七話 ページ45
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「A!!目を覚ましてくれお願いだ!!」
炭治郎が意識を取り戻した時、辺りは凄惨な戦場の跡地と化していた。
自分の背丈より高い建物はどこにもない。すべて瓦礫となって転がっていた。
その中に紛れるようにAも倒れていたのだ。
「毒は禰豆子の血で消えたはずなのに…!!どうして!」
Aは「もうソイツ死んでるよ」と言われても頷けるような状況に置かれていた。
体中が裂かれ、血の面積が肌の面積より大きくなっている。
傍らに折れた短刀が転がっていた。
「ッ……最終手段だ…!」
薄らいでいたAの意識が一気に明瞭になる。
危機察知能力が反応した。
「た、頼むから頭突きだけはよしてくれ頼むから…」
本当に死んでしまう。
視界に頭をぶつけようとしてくる炭治郎が映り、Aは咄嗟に声を上げた。
「! Aっ!!」
「ああAだよ」
へろ、と笑顔を零すと耐えかねたように炭治郎が抱き着いてくる。
めっちゃ強く。
「A!AA!!本当によかった…!」
「いいい痛い痛い痛いやめろ炭治郎潰れる潰れてしまう」
体中バッキバキなんだよ、と訴えるも彼は離してくれなかった。
でも、ふわりと優しくはなった。
まるで恋人を抱き締めるように。
ぼふっ、きゅー、とAは大人しくなった。
手持ち無沙汰な両手を宙に浮かせたまま、顔の熱を逃すように話題を逸らす。
「……お前のおかげだよ」
「え?」
「お前が信じてくれたからあの血鎌も全部凌げた」
Aは諸々の思考力が低下している。普段よりだいぶ素直になっているという事だ。
「ありがと」
今度は炭治郎がぼふっ、きゅー、となる番だった。
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今回の戦いでの被害は想像を絶するものであった。
遊郭は大半の屋敷が破壊され、多くの人々が死んだ。
だが得たものも大きかった。
『鬼舞辻無惨は寧塑寺Aを狙っている』
この情報は今後の状況を大きく左右するだろう。
「寧塑寺Aさえ見つければ私は日光を克服できる」
そう言って薄ら笑いを浮かべるのは何者か。
少なくとも、Aの過去を全て知る数少ない存在の一人である事は確かである。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時