守備範囲外でも愛してる【文スト】

匂い ページ28

婚約前！モブ表現有るので注意！


寝台の軋む音と、知らない香水と石鹸の匂い。匂いが強くなって額にキスが落とされる。目を覚ますと森さんの姿がある。

「起こしたかい?」

首を横に振ってからぼやけた頭で彼に抱きつくと知らない匂いがする。仕事だって、必要なことだって分かってる。でもちゃんと割り切るのは私には難しい。

「おかえりなさい。」

「ただいま...ごめんね。」

また首を振る。自分以外の誰かが彼の腕にいたと思うと苦しくてしかたがないし嫉妬もしてる。だけど、私は森さんを手助けしたいし、彼を尊重したいから何も言わない。でもやっぱり他人の匂いは気に入らないから離したくない。

「怒ってる?」

「...怒ってはないです。でも他の人の匂いは嫌です。」

怒ってはない。でも、なんか嫌だ。彼が他の人の匂いをさせているのが、顔も知らないその人が彼を自分のだって言ってるみたいで嫌だ。森さんが微笑んでいるのが分かった。

「Aおいで。」

ゴソゴソと寄っていくと森さんは私を彼の方を向くように膝の上に座らせる。

「私もね、飾り立てた香水や石鹸より、Aがいい。」

ぎゅっと包み込まれるまま体を任せる。相当お疲れみたいだ。この人は直ぐ無理をする。そんな所も好きだけれど、決して体には良くない。

「...できるだけ無理しないでくださいね。」

「うん。」

「今日はもう寝ましょうか。」

子供をあやす様に背中をさすれば、ぬいぐるみを抱くようにぎゅっとされる。なんか寝台で座ったまま寝そうだなぁ。

「ちゃんと寝っ転がって寝ましょう？」

「今日のAは優しいねぇ。」

「そうですか？」

「だって一緒寝てくれるんだろう？」

「...はい。」

その頃にはもう匂いなんて気にならなかった。抱き合ううちに他の人は消えていった。森さんが私を頼ってくれて、選んでくれたことが嬉しかった。



まだまだ、添い寝でもドキドキしちゃう可愛い夢主さん。モブの出る幕はないくらいラブラブなのである。

意地悪→←●子供

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す