守備範囲外でも愛してる【文スト】

妊娠 ページ20

倦怠感、頭痛、腹痛。気持ち悪いし、眠い。そして、生理がこない。薬局で検査薬を買って試してみれば、案の定陽性反応。喜んでいい事だと思うけど、どうなんだろう。子供ができるってことは守るべきものが増えるってことだ。必然的に組織への負担も増えてしまう。ぼんやりと考え事をしていれば声がかけられる。

「大丈夫かい？」

心配そうな顔。ココ最近ずっと体調不良だとは言っていたから何時もよりも気をつかってくれているんだろう。ふとこの人に隠し事をすることに何の意味があるのか、そう思えた。

「...子供が、できました。」

「えっ...」

手をぎゅっと握る。妊娠報告がここまで怖いことだと思わなかった。どうしよう。鴎外さんを見れば彼にしては珍しく本当に表情がびっくりしている。

「本当に？」

「本当...です、よ。」

ぎゅっと体が包まれて、引き寄せられる。とても温かい。胸がきゅうっとして、泣けてきてしまう。何を言われた訳じゃない、でも泣いてしまう。

「産んでくれるかい？」

「いい、んです？」

「女の子だといいなぁ。」

耳元で幸せそうな声が聞こえる。この人は本当に喜んでくれている。伝えるのに悩む必要はなかったんだ。なんだか釣られて泣き笑いになる。

「もう、気が早いですよ。」

2人でわあわあ、イチャイチャやっているとエリスちゃんがやってくる。

「まーた、2人でイチャついてる！たまには私にもかまってよ！」

「聞いてよエリスちゃん！私父親になるんだよ！」

「えっ、A本当に！？」

鴎外さんじゃなくて、真偽を私に聞くあたりが彼女らしい。照れながら頷けば、おめでとうと言って抱きついてくれる。友人の1人である彼女に祝ってもらうのはとても嬉しい。

「リンタロウが父親なんて信じられないわ。」

「本当にねぇ。」

「酷いよ、2人ともぉ！」

君の生まれる予定の家はこんなに温かい家なんだとまだ見ぬ子供に伝えたい。横浜の闇の世界の頂点に立つ彼も、君の前では唯の父親なんだよと。私は幸せ者だ。愛する人と結婚できて子供まで授かった。大事な友人も一緒にいてくれる。私は2人をぎゅうっと抱きしめた。





森さんと結婚したんだから、エリスちゃんと結婚したとも同義？と疑い始める蝶々です。何を言っているんだろう私は。

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