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24話 ページ25

「本格的に迷ったぞ、これ」

もともと、地図もなしに合流場所を目指したのが馬鹿な話ではあるのだが。

「クインケも無いし…」

今のような丸腰のままで喰種に襲われたら、たちうちのしようがない。

「ちょっと失敬」

ふと視界の端に映った、倒れた捜査官。
彼が握ったままのクインケを手に取ってみる。
鎌のような形状のそれは、案外手に馴染んだ。

「あなたの分まで戦うよ」

今はすでに届くはずもない彼に伝えて、手を合わせた。

この辺りの壁は作りがぞんざいなのか、微かに金属が傷つけ合う音や、悲鳴が聞こえてくる。
それを頼りに、壁をつたっていく。

「やあご機嫌麗しゅう、お嬢さん」

最も破壊音が大きく聞こえる部屋の前で、怪しげなマントに身を包んだ男に声をかけられた。

「物騒な物をお持ちで」
「お互いさまでしょ、化け物」

濃い血の匂いを発する男は、捜査官ではない。
ほぼ確実に喰種だろう。

「化け物、ねぇ…」
「邪魔。そこ通りたいの」

尾赫をゆるゆると漂わせながら、男は口角を上げた。
クインケを構えて、その笑みに答える。

「アオギリの樹は君達を必ずや掃討する」
「喰種如きが何を言う」

尾赫が空気を切り裂いて、頬の横を過ぎていく。
それを狭い廊下のギリギリまで下がって避け、
クインケを振りかざす。

「普通の捜査官じゃない、ってわけかな」
「ただのヘボ捜査官だけど」

鎌の刃を壁に食い込ませて、それを機動力にしながら蹴りを繰り出す。

喰種は腕でそれを防いでさらに尾赫を突き出す。

「人間は脆くてねぇ、ダメだよ」

赫子が私の腕を掠ったとき、男は呟いた。

「食べ物としての役割しか持たないからね」

クインケを素早く回収し、腕の傷を確認する。
浅く切られているだけで重傷ではなさそうで、私は立ち上がった。

「痛そうだね、ギブアップするかい?」
「たわけ」

相手の股下目掛けて突っ込み、クインケの刃を首に食い込ませる。
意表を突かれた男は、うっと呻いて腕で鎌を引き剥がそうともがいた。
私は決して離すまいと、腕に力を入れてそのまま首をかっぴいた。

「うわ、最悪」

セーラー服に飛び散った返り血に顔を歪めて、クインケに付いた血を払った。

大きな扉を開いて、私は破壊音の響く部屋に足を踏み入れた。

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だいすけ(プロフ) - 冬りんごさん» 放置中、読んで頂いて本当に嬉しいです… (2018年11月6日 18時) (レス) id: 5d2de3d17d (このIDを非表示/違反報告)
だいすけ(プロフ) - 冬りんごさん» コメントありがとうございます!ほんとですか!?ちょっと見てきますね… (2018年11月6日 18時) (レス) id: 5d2de3d17d (このIDを非表示/違反報告)
冬りんご - 面白くて鈴屋くんがめっちゃ可愛い(#´ `#)応援してます!!だけど、確か葉っぱ○国っていうサイトにだいすけさんの名前書かれてましたよ、書かれてて大丈夫なんですか…? (2018年11月4日 15時) (レス) id: 909a291f12 (このIDを非表示/違反報告)
だいすけ(プロフ) - 向葵さん» ありがとうございます!もっと頑張らなきゃですね! (2018年8月3日 11時) (レス) id: 9036e20e71 (このIDを非表示/違反報告)
向葵 - 面白いです! (2018年8月3日 8時) (レス) id: 38ef399b5a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だいすけ | 作成日時:2018年5月23日 1時

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