三十九枚 ページ41
Aside
「山梨さん」
「…あー。真田コーチ」
一瞬名前をド忘れしていたが、何とか彼の声を思い出して名前を口に出す。
昇格テストの後日、結果が発表される今日。
三軍の体育館に向かおうとしている私を、真田コーチが呼び止めた。
「君の働きと推薦から、一軍のマネージャーをしてほしいんだ」
「エッ」
マネージャーになって二週間ちょっと。
いきなりの昇格で動きが止まり、なんで?と言葉が零れる。
「三軍のマネージャー…佐々木さんがいるだろう。彼女から山梨さんがよく働くと聞いてな。素人ながらも勉強して、サラッとアドバイスもしているとも」
「いや、まぁ、当たり前のことしてただけだし。…だったら佐々木さんを昇格させたらどうなんすか?彼女こそ…」
「彼女は自分から昇格を拒否している。それに三軍のマネのまとめ役、教育係として勤めてもらっている」
だからか、と一人納得する。
いろんなことを知っていて、仕事も早く、そんな彼女がこの実力主義とも言ってもいいこの部活で上にいないなんておかしいと思ったんだ。
「…何軍でも、なんでも大丈夫です。…あと、今回の選手の昇格者っていたんすか」
「いや、残念ながらいないが。…どうした」
「別に。いないなら、いいです」
すぐに出てしまった答えに、思わず目を伏せる。
努力を続ける彼の、残酷な結果を知ってしまった私だが、私には人を慰めるような言葉はうまくかけられない。申し訳ないけど。
「では明日から頼む、体育館の場所はわかるな?」
「わかります」
私が布団の中で頷けば、真田コーチは一軍の体育館に向かって行った。
私は足を進めた。
最初に会った佐々木さんから勝手に推薦してごめんねと謝られたが、ちゃんと私は感謝の言葉を返す。
「…私、最初山梨さんが怖かったんだ」
「変な奴って言われるの多いけど、怖いって言われるの珍しいです」
「だ、だって!表情見えないし…、初めて喋ってるの見た時凄く毒舌だったから!」
「それはタイミングが悪かったですね!やなタイミング!」
佐々木さんはほんとにね、とクスクスと笑った。
「でも、第一印象で思うような性格じゃなくて、選手のことちゃんと考えて行動してくれてたから。
山梨さんには、一軍のマネを頼みたかったんだ」
虹村によろしくね、なんて佐々木さんは優しい声で私に言った。
確か虹村って人はバスケ部の主将だったはず。
どうよろしくすればいいのかわからないけど、私に優しく仕事を教えてくれたり、接してくれた佐々木さんだから、素直に頷いた。
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こたきんぐ(プロフ) - 暁月さん» ありがとうございます!!(好き) 少々お待ちをっ! (2020年5月22日 20時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
暁月(プロフ) - 続編おめでとうございます!!(お前は早すぎんだよ) (2020年5月21日 22時) (レス) id: 1be42be6d7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 暁月さん» ありがとうございます!そのお言葉嬉しい限りですうう!ほんとに更新遅いですが頑張ります! (2020年5月13日 15時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
暁月(プロフ) - 応援してます!(短くてすみません()) (2020年5月13日 14時) (レス) id: d0b41bf1bc (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 手越さん» リメイク前!?大昔から…!あの時は本当に…ちょっとお恥ずかしいwありがとうございます!ぼちぼちですが頑張っていきます! (2020年5月13日 14時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2019年7月20日 12時