二十五枚 ページ27
Aside
結衣ちゃんは自分の兄に、さっきのことを拙い言葉で必死に伝えてくれている。
さっきね、このおねえちゃんが、と結衣ちゃんが言うのに対し兄は、そうか、ああ、と優しい声で返している。
しかしこの声、どこかで聞いたことがある。
もっととげとげしい声だったけれど、どこか、…あ。
「タオル」
「……」
そうだ、昨日聞いたばかりなんだ。
昨日私が濡れてしまった時、この結衣ちゃん兄が私にタオルを貸してくれたんだ。
「この前いきなりタオル投げてきて貸してきてくれた人だ」
「…だったらなんなのだよ」
「いや返さなきゃなって。また返すから…まって貴方何年生?普通にため口きいてた」
「…お前と同じ学年なのだよ」
「あっそう、ならいいや」
一瞬焦ったけど、同学年ならどうでもいいや。
まだタオルはおひさまに照らされているはずだから、今は返せない。
多分明日には返せるなと考えていると、結衣ちゃんの兄が口を開いた。
「…結衣が、世話になった」
「え?そんなの別にいいけど。それより早めにタオル返したいから、明日返すわ。どこ行けばアンタに会える?」
私の言葉にこの男は驚いたようで間を開ける。
不思議に思い布団の中で小首をかしげるとこほんとせき込んだのが聞こえた。
「…いつでもいい。朝と放課後は、第一体育館にいる」
「あーじゃあ朝行こーかな。…第一体育館って、確かバスケ部だったっけ。…アンタバスケ部か」
バスケ部と言えば桃井さんがマネージャーしてるんだよね。
あと黒子君が頑張ってるところ。
ふーん、と一人納得していると結衣ちゃんが話に入ってくる。
「おにいちゃんのお友だちだったの?布団の妖精さんは!」
「妖精っ?」
「結衣ちゃん、お兄さんの前でそれは、ね。やめよう」
幼い子の夢…?をつぶすのも何だか気が引けるので否定はしないでおいた。
だがちょっと否定すればよかったという気持ちが大きく膨らむ。
「ま、まあ別にお友達じゃないんだけど、うん。えっと、それじゃ私は帰るね、結衣ちゃんとタオルの人じゃあ」
布団を揺らしながらそそくさと帰ると、結衣ちゃんはじゃーね!と元気よく手を振って見送ってくれた。
結衣ちゃん兄はただただ私が帰っていくのを静かに見つめていた。
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革ベルト
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こたきんぐ(プロフ) - 暁月さん» ありがとうございます!!(好き) 少々お待ちをっ! (2020年5月22日 20時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
暁月(プロフ) - 続編おめでとうございます!!(お前は早すぎんだよ) (2020年5月21日 22時) (レス) id: 1be42be6d7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 暁月さん» ありがとうございます!そのお言葉嬉しい限りですうう!ほんとに更新遅いですが頑張ります! (2020年5月13日 15時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
暁月(プロフ) - 応援してます!(短くてすみません()) (2020年5月13日 14時) (レス) id: d0b41bf1bc (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 手越さん» リメイク前!?大昔から…!あの時は本当に…ちょっとお恥ずかしいwありがとうございます!ぼちぼちですが頑張っていきます! (2020年5月13日 14時) (レス) id: f2404a4c45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2019年7月20日 12時