【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の6

吸血輝譚【ふうか様リクエスト：吸血鬼シリーズ続編】 ページ17

「良い夜だなァ、流華」
『本当ね』

組んだ腕に身を寄せる流華。
こうしていれば、唯の紳士淑女。

けれど、二人は外見よりずっと永く生きている。吸血鬼と呼ばれる、魔物なのだ。
だから、人間なら不気味に思うだろ今宵の赤い月は、とても心地よい。

月夜の散歩と洒落込んで。
種族を隠して人間のふり。
月夜の散歩と洒落込んで。

『二人でお出かけ、久しぶり』

楽しそうに笑う流華に、中也も口角を上げて。
そっと。大樹の陰で口づけ。

かつん。

『あ』
「なんだ、空腹かァ？」

ぶつかった犬歯に中也が笑う。
それに、流華は頬を膨らます。

『だって、中也の香りがしたから』
「…良いぜ」

襯衣の釦を緩める。
晒された首元。

誘われるように、流華は噛り付く。

彼女より百数十年も長く生きている中也からすれば、まだまだ拙い吸血。
其の姿にさえ、愛おしさを感じて。
彼女の髪を梳いていた手は、いつしか頭部を抱き締めていた。

『はぁ、中也』

顔を上げた彼女。
合わせた唇から血の香り。

「…俺も」
『ん』

流華は微笑んで首筋を晒す。
しかし、其処よりも・・・くっきりと浮き出た鎖骨が厭に美味そうで。
中也は狙いを定めて、鎖骨下の動脈に牙を埋め込んでいく。

『ん…！』
「痛かったか？」
『大丈夫…其処も、出来るんだ…』
「嗚呼」

滴る赤色。芳醇なその香り。
溜まらず舌を這わせて、彼女の血液を吸い上げる。

「ふ…美味い」
『お粗末様…？』

まるで人間の食事みたいな挨拶に二人して笑う。

「流華…」
『中也…』

手を絡める。
お互いに考えている事は同じ。

笑って走り出す。
目指すのは自宅。

帰ったら、寝台に飛び込んで。
互いに貪り合って。
愛語らって。

そんな事だけ考えて。

赤い月の下を走る。
二人とも、幸せに笑っていた。

――――

リクエストを頂きました。
ふうか様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2016年11月10日ちょこ

無邪気な彼女【ラムネ様リクエスト：首領の姪っ子に想いを寄せる中也】→←学生逢引【パピルス様リクエスト：学生生活続編】

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