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続き ページ36

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「わあっ、赤になった!」

「すごいよなあ……さてA、ちょい口閉じ?チリちゃんが塗ったる」

大人しく口を閉じると、チリがゆっくりと筆を唇に滑らせてくれる。

すうっ、と紅が唇に乗せられていく感覚がどこかくすぐったい。

少しだけ目線を上にやると、真剣でありながらも慈愛の篭った眼差しのチリが見える。

「ん?なんやこっち見て?もーちょいいい子にしといてや?」

その眼差しと言葉は、昔Aが可愛い髪形にしてと母にねだった時、待ちきれなくて母をちらちらと見ていたあの時にそっくりで、心にじんわりと熱が広がっていく感覚を覚える。

そうして丁寧に紅を差してくれたチリが「よし、完成や!」と筆を離した。

「メイクさん堪忍なあ、せっかくやってもらったんにチリちゃん弄ってしもて」

「全然いいのよ!すっごくいいもの見せてもらったから!二人って本当に強い絆なのね……!」

メイクさんは「はあ尊い……」と盛大に浸っている。

「これは二人並んで写真を撮るべきよ!カメラさんとびきりいいの撮ってあげてっ」

こうしてメイクさんの強い勧めにより、チリとAは並んで写真に収まることになった。

「この写真、出来上がったらお互い部屋に飾るんはどうや?」

「あ、いいね。家族写真みたいにリビングに飾ろうかな」

カメラマンさんが「それじゃあ撮りますよー」とカメラを構える。

「なあA、……」

「ん?なんか言った?」

「……なんでもあらへんよ!さあ笑顔や笑顔!」

パシャッ、とシャッターが切られた音がする。

こうしてスタジオ撮影は終わったのだが、この後すぐにチリによるスマホでの撮影が連写でしばらく続くことになったので、スタジオから帰ることになるのはもう30分後の話である。

「あぁぁぁ可愛いなあうちの子!絶対保護かけてフォルダ作るわ!」








帰りの飛行機にて。

強行突破旅行だったため疲れたのか、Aはぐっすりと眠っている。

それを見ながら、チリはフォトスタジオで呟いた言葉を思い出す。

『なあA、将来世界で一番好きな人ができて、その人のとこに行く日になったら。その日はまた、チリちゃんに紅差しやらせてくれな』

思わず零れたその言葉が本当になる日が来ないことがチリにとっては一番なのだが、それでもAが選び取る未来なら、心からの応援と祝福を。

それもまた、チリの本心なのである。

可愛い妹分の手を握り、チリもひと時の眠りにつくのだった。



End

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作者名:リトルポム | 作成日時:2022年12月17日 1時

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