第1話 ページ3
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ピン ポン パン ポーン
《生徒の皆さん 本日から 課外授業が 始まります》
《説明を いたしますので グラウンドに 集合してください》
ポン パン ポン ピーン
「……ああ、もうそんな時期かあ」
食堂で遅めの朝食にしていたAの耳に入ってきたのは、久しぶりに聞く放送。
「今回はどんなドラマが起こるのかな。楽しみだね、シャル!」
足元にいる相棒―綺麗な毛並みのグレイシアだ―に声をかけると、ニッコリ微笑んでその愛らしい声で鳴いてくれる。
デザートのヨーグルトの最後の一口を飲み込んで、「ごちそうさまでした」と手を合わせる。
食器をカウンターに下げ、食堂を出てぐっと伸びをする。
窓からは明るい陽光が差しこんでいる。
はじまりを告げるような、いい朝だ。
「……よし。行くよシャル、ボールに戻ってね!」
相棒の入ったモンスターボールをひと撫でしてバッグに入れる。
さあ、出発だ。
グレープアカデミーの目玉授業である長期にわたる課外授業。
「宝探し」をテーマに、自分だけの「宝物」を見つけ出す冒険に出かけるのだ。
もちろんアカデミーの生徒の大半がこの特別な授業を楽しみにしている。
クラベル校長の説明会が終わるが早いか、年若い生徒たちを中心に一斉にアカデミーを出ていく。
「皆さんお気をつけてー!パルデアの大穴への立ち入りは、危ないので校則違反ですからねー!」
そんなクラベル校長の注意を聞いている生徒は果たしているのかどうか。
「校長先生のこの言葉、みんな聞こえてるんですかね」
Aがクラベル校長の隣に立つと、「おや」とクラベル校長がこちらを見た。
「おはようございますAさん。ええ、まあ、ほぼほぼ聞こえていないのでしょうが……」
「ですよね……」
「Aさんは今回はどうされるのですか?前回は課外授業期間もかなりの間アカデミー内でお勉強されていたようですが……」
クラベル校長の言う通り、Aは前回の「宝探し」期間中は、教師を目指すための集中的な勉強期間に当てていた。
卒業要件科目は取り終わってしまっているので、Aは必修の課外授業として「宝探し」に参加しなくても良くなっているのだ。
「ハッサク先生とは相談しましたか?」
「はい、そろそろ実践を加えていきましょう、とのことでした」
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作者名:リトルポム | 作成日時:2022年12月17日 1時