【黒バス】私は幸ちゃんにしか興味ありません【笠松幸男】 続編

第29話 ページ29

笠松side


家に帰って俺は何度も考えた。

これからどうすればいいのか、Aに何をしてあげられるだろうかって。



でもどれだけ考えても答えは一つしか思い浮かばなかった。



Aにもう1度振り向いてもらうしかない。

記憶を取り戻さそうとするのは、多分Aの身体に良くないはずだ。





だったらまた最初からやり直せばいい。









俺は早速Aの病室へ向かった。



中に入ると少し驚きながら俺に会釈した。

今日はまだ誰も見舞いには来ていないようだった。




｢少しは気分良くなったか？｣


｢はい。正直なんでここにいるのかもわからない状態だから、戸惑いはありますけど…｣


｢そっか…｣




会話が続かない。

記憶がなくなるまではこんなことなかったはずなのに。

でも仕方ないか、Aは今俺のことをほとんど知らない状態なのだから。




｢これから毎日見舞い来ようと思ってんだけど、迷惑じゃないか？｣


｢先輩が毎日？
嬉しいですけど、いいんですか？｣


｢俺が好きですることだから気にすんな。
多分日向も来てくれるだろうし。｣


｢ありがとうございます。嬉しいです。｣




そう言って笑うAの表情は相変わらず可愛くて、

今すぐ抱きしめたい衝動に駆られた。



もちろんそんなことはできない。

今の俺にそんな資格はないんだ。




｢じゃあとりあえず今日は帰るわ。また明日来る。｣




そう言って病室を立ち去ろうとした。




｢あ、あの！｣


｢ん？｣









｢ありがとうございます、幸先輩。｣






なんでその呼び方なんだよ。

まるで3年前に戻ったかのような感覚に陥った。



俺はなんとも言えない気持ちのまま病室を後にした。

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