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目が覚めると外は明るかった。カーテンが日光を受けて、暗い部屋で発光しているように見えた。何時だ、とベッド上の時計を見るために体を起こす。
「いっ、たい」
思わず声を上げてしまうほど腰が痛かった。
え、なにこれ。老化?
時計を見ると午前八時過ぎだった。まだこんな時間か。寝直そうかな。と思っていたら呼びかけられた。
「おはよう、昨日はごめんね。」
太宰さんだ。顔もいい上に声もいいな。寝惚けた頭で思う。
「おはようございます、こちらこそなんだかごめんなさい。」
わけも分からず謝り、目をこすった。あ、昨日あのまま寝ちゃったからお風呂入りたいな。あの綺麗なバスルーム。
「忘れるといけないから、先にお金を渡しておくよ。いくらほしい?」
「いつもは三万円貰ってます。」
「そう、じゃあこれ。」
彼が財布から取り出したのは三枚ではなく五枚だった。もちろん全て一万円札だ。
「こんなに、いただけませんよ」
口ではそう言いながら、その五万円から目が離せなかった。恥ずかしいが、仕方がない。
「気持ちだと思って受け取ってくれないかい?昨夜は少し無理をさせてしまったし、なにより。」
君、初めてだったでしょ。
と諭すように言われた。何度も何度も見ず知らずの人間に触られて舐められて、こんな身体に価値なんてない。と心では思ったが、素直に受け取っておこう。と手を伸ばした。
それを財布に仕舞い、お礼を言ってずっと言いたかったことを言う。
「お風呂借りていいですか?」
「勿論だよ、ゆっくり入ってくるといい。」
優しく微笑んでくれた。この人の笑みは不思議と綺麗だと思った。普段見ているおっさんの笑いは、何処か気持ち悪いのに。不思議だな。顔ってすごい。とバスルームに向かった。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時